副題に「拡大する格差とアンダークラスの出現」とある通り、急速に社会的格差・経済的格差が拡大している構造が分かりやすく解説されていた。

貧困連鎖 拡大する格差とアンダークラスの出現

貧困連鎖 拡大する格差とアンダークラスの出現


<読書メモ>

・専門の学者の間では、1990年代の半ば過ぎから格差の拡大が指摘されていたが、「格差社会」という言葉が流行し始めたのは、2005年の後半。

ジニ係数:格差の大きさを直感的に理解しやすい数字で表現した指標で、最大値は「1」で格差が大きい場合、最小値は「0」で所得が完全に均等に配分された場合。格差の大きさそのものを指標化したものなので、平均所得が高いか低いか、人口規模が大きいか小さいかは関係ないので、時代間比較や国際比較に都合が良い。

2008年 先進諸国の経済格差(ジニ係数)

米国 0.381
イタリア 0.352
英国 0.335
日本 0.321
カナダ 0.317
オーストラリア 0.301
ドイツ 0.298
フランス 0.281
オランダ 0.271
スウェーデン 0.234


・日本の貧困線(生活費の水準)は、約150万円。1人暮らしだと150万円、二人家族では212万円、三人家族では259万円、四人家族では300万円が貧困線であり、これより少ない収入しかない世帯が貧困層となる。
日本の貧困率は14.9%であり、7人に1人より少し多いくらいの貧困層がいることになる。
しかし、実際に生活保護を受けている人の比率は1.18%にすぎないので、貧困状態にある人のうち生活保護を受けているのは、わずかに8%程度のみとなる。

2008年 先進諸国の貧困率

米国 17.1
日本 14.9
オーストラリア 12.4
カナダ 12.0
イタリア 11.4
ドイツ 11.0
英国 8.3
オランダ 7.7
フランス 7.1
スウェーデン 5.3

・日本の経済格差は、平均より少し大きい程度だが、貧困率は先進国で最高レベル。
・日本の貧困率は、1980年代中ごろには12.0%だったので、この20年間で2.9%増加した。
生活保護世帯は、1995年には65万世帯だったが、2000年には75万世帯、2007年には111万世帯と、加速度的に増加している。
非正規労働者1984年には604万人(男195万人、女409万人)だったが、2007年には1,732万人(男538万人、女1,194万人)と3倍近くまで達しており、雇用者の三割以上を占めている。
・1992年から2002年の10年間に、ワーキングプアは約75万人増加した。


現代日本の階級構造

資本家階級 335万人 5.4%
新中間階級 1,220万人 19.5%
旧中間階級(自営業) 1,020万人 16.3%
正規雇用労働者階級 2,289万人 36.7%
アンダークラス 1,381万人 22.1%
就業者総数 6,245万人 100%


○金融資産の分布

5億円以上持つ超富裕層 6.1万世帯 65兆円
1億円以上持つ富裕層 84.2万世帯 189兆円
5千万円以上持つ准富裕層 271.1万世帯 195兆円
3千万円以上持つ豊かな大衆層 659.8万世帯 254兆円

家計の金融資産1,173兆円のうち、合計1,021万世帯(全体の20.6%)が、703兆円(59.9%)を所有している。