副題に「拡大する格差とアンダークラスの出現」とある通り、急速に社会的格差・経済的格差が拡大している構造が分かりやすく解説されていた。
- 作者: 橋本健二
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2009/02/19
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<読書メモ>
・専門の学者の間では、1990年代の半ば過ぎから格差の拡大が指摘されていたが、「格差社会」という言葉が流行し始めたのは、2005年の後半。
・ジニ係数:格差の大きさを直感的に理解しやすい数字で表現した指標で、最大値は「1」で格差が大きい場合、最小値は「0」で所得が完全に均等に配分された場合。格差の大きさそのものを指標化したものなので、平均所得が高いか低いか、人口規模が大きいか小さいかは関係ないので、時代間比較や国際比較に都合が良い。
2008年 先進諸国の経済格差(ジニ係数)
米国 | 0.381 |
イタリア | 0.352 |
英国 | 0.335 |
日本 | 0.321 |
カナダ | 0.317 |
オーストラリア | 0.301 |
ドイツ | 0.298 |
フランス | 0.281 |
オランダ | 0.271 |
スウェーデン | 0.234 |
・日本の貧困線(生活費の水準)は、約150万円。1人暮らしだと150万円、二人家族では212万円、三人家族では259万円、四人家族では300万円が貧困線であり、これより少ない収入しかない世帯が貧困層となる。
日本の貧困率は14.9%であり、7人に1人より少し多いくらいの貧困層がいることになる。
しかし、実際に生活保護を受けている人の比率は1.18%にすぎないので、貧困状態にある人のうち生活保護を受けているのは、わずかに8%程度のみとなる。
2008年 先進諸国の貧困率
米国 | 17.1 |
日本 | 14.9 |
オーストラリア | 12.4 |
カナダ | 12.0 |
イタリア | 11.4 |
ドイツ | 11.0 |
英国 | 8.3 |
オランダ | 7.7 |
フランス | 7.1 |
スウェーデン | 5.3 |
・日本の経済格差は、平均より少し大きい程度だが、貧困率は先進国で最高レベル。
・日本の貧困率は、1980年代中ごろには12.0%だったので、この20年間で2.9%増加した。
・生活保護世帯は、1995年には65万世帯だったが、2000年には75万世帯、2007年には111万世帯と、加速度的に増加している。
・非正規労働者は1984年には604万人(男195万人、女409万人)だったが、2007年には1,732万人(男538万人、女1,194万人)と3倍近くまで達しており、雇用者の三割以上を占めている。
・1992年から2002年の10年間に、ワーキングプアは約75万人増加した。
○現代日本の階級構造
資本家階級 | 335万人 | 5.4% |
新中間階級 | 1,220万人 | 19.5% |
旧中間階級(自営業) | 1,020万人 | 16.3% |
正規雇用労働者階級 | 2,289万人 | 36.7% |
アンダークラス | 1,381万人 | 22.1% |
就業者総数 | 6,245万人 | 100% |
○金融資産の分布
5億円以上持つ超富裕層 | 6.1万世帯 | 65兆円 |
1億円以上持つ富裕層 | 84.2万世帯 | 189兆円 |
5千万円以上持つ准富裕層 | 271.1万世帯 | 195兆円 |
3千万円以上持つ豊かな大衆層 | 659.8万世帯 | 254兆円 |
家計の金融資産1,173兆円のうち、合計1,021万世帯(全体の20.6%)が、703兆円(59.9%)を所有している。