健康ビジネスというキーワードから、大分前に手に入れていた本だが、積読となってしまっていた。

著者はウォートン出身(MBA)で経済学者。22歳でシティバンクの最年少役員、25歳で最年少副社長に就任する一方、24歳でニューヨーク大学の非常勤教授となってから20年間同大学で教鞭をとった。いくつかのビジネスを起業し、26歳前に100万ドル、30歳前に1千万ドルの収入を得るようになった。
これからの起業のキーワードとして、「ウェルネス(健康増進)」という言葉を頭に入れておきたい。

健康ビジネスで成功を手にする方法

健康ビジネスで成功を手にする方法

<読書メモ>

○ヘルスケア(疾病)産業とヘルスケア産業の定義
・疾病産業:病気を持っている人に対し、受動的に提供される製品・サービス。これらの製品・サービスは、病気の症状を治療したり、病気を退治したりしようとする。
 →米国経済の1/7がヘルスケア産業(約1兆5千億ドル:約180兆円)と呼ばれる疾病ビジネスにつぎ込まれている。
ウェルネス産業:健康な人が、より健康で生き生きとするため、また老化の影響を遅らせたり、そもそも病気にかかるのを防いだりするために、積極的に提供される製品・サービス。

○新技術に基づいた産業の最大の富の享受者
・起業による最大の富は、製品やサービスを作る人々ではなく、常にそれらを流通させる人々によって築かれる。
 →特定の技術にとらわれない流通業者だけが有望な新製品に素早くシフトできる。
 →たいていの小売品コストは、流通コストで70〜80%を占める。

○新たな大衆市場向けビジネスへ投資する際の5つの注目点
 1.価格が手ごろである
 2.人気の持続性がある
  →購入者がある程度に達したら販促活動なしで一人歩きする
 3.消費が継続する
  →消費者に新製品を試してもらう為にかかる宣伝広告費は100ドル
  →新党した製品が成功する為には、消費が絶え間なく続いていかなければならない
 4.万人にとって魅力がある(ユニバーサル・アピール)
 5.消費の為に使われる時間が短くてすむ
  →忙しい消費者が製品やサービスを楽しむ時間を見つけてくれなければならない

ウェルネス革命が必要な理由
・米国の人口の61%は過体重(1億8400万人)であり、27%は病的な肥満(7700万人)
 →どちらの比率も5年(1994年→1999年)で10%増え、肥満は1970年代からほぼ倍増。
・食品産業(1兆ドル:約120兆円):所得の低い、不健康な、過体重の顧客をターゲットとし、健康的な量では絶対に満足しないように仕向けている。
 →「ポテトチップ・マーケティング方程式」:製品の90%以上は、10%以下の顧客が買う
・医薬産業(1兆5千ドル:約180兆円):医者は製薬会社のターゲットであり、患者が受け取るのは医者個人が最も利益がでる薬や治療である。
・食品産業と医療産業を構成する数多くの企業は、経済の普遍的法則に支配されており、さながら巨大な陰謀の一部のように足並みをそろえて行動している。

ウェルネス上の理由から作られるべきでない牛乳
・政府より70億ドル(約8400億円)の補助金が支給されている。
骨粗しょう症を引き起こす→牛乳のタンパク質(カイゼン)が骨の中のカルシウムを大量に奪ってしまう
・牛乳はある種のホルモンを含み、伝染性の病気をもっている。
・野生の牛は一日当り10ポンド(約4.5キロ)の乳を出すが、乳牛は成長ホルモン(BGH)を大量に投与させ100ポンド(約45キロ)の乳を出す。乳房が以上に発達し、地面を引きずる為、頻繁に感染症にかかり、絶えず構成物質が必要となる。
 →米国ブラジャーメーカーは牛乳にBGHが使われ始めてから売上が好調であり、ホルモン剤は初潮年齢を下げ、乳がんの原因となっている。
 →野生の牛の寿命は20〜25年だが、乳牛は4〜5年しか生きられない。

○フランク・ヤノウィッツ医師の話
ハーバード大学医学部の卒業式の日に、卒業生総代のマイケルと、恩師の教授がチャールズ川のほとりを歩いていた。突然、川の上流から男が溺れながら助けを求めて流されてきた。
マイケルは川に飛び込み、男を川岸に引き上げ、人工呼吸により人命を救助し、教授に誉められた。マイケルはびしょ濡れで疲れ果てていたが、またしても溺れかけている男が流れてきた。
マイケルは再び川に飛び込み、男を救助し意識を回復させた。驚いたことに、その後も何度も同じことが続き、ついに7人目の男が流れて来た時、苛立ったマイケルが教授に「僕は献身的に人助けをしようと思っている医者ですが、これ以上こんなことはやってられません!」
「それならば」と教授が言った。「上流に走っていって、橋の上から次々に人を突き落としている者を止めたらどうかね」
 
○草創期のウェルネス産業におけるビジネス
・20〜30年前には経済的に意味のある規模ではなかったが、2000年には年間総売上は2千億ドル(約24兆円)、米国自動車売上高の約半分を占めている。
 →ビタミン、サプリメント、美容整形手術、眼科手術(レーサー光線による近視手術、放射状角膜切開術)、美容皮膚科学、遺伝子工学(性の選択、生殖機能の活性化)、審美歯科(歯冠、インプラント)、予防医学、医療費貯蓄口座、高額免責健康保険(ウェルネス保険)、フィットネス・クラブ、健康・運動器具、薬剤(バイアグラ:インポテンツ薬、ロゲイン:育毛剤)、健康食品、健康食レストラン、ダイエット製品


『健康ビジネスで成功を手にする方法』 ポール・ゼイン・ピルツァー著 白幡憲之訳 2003年2月28日初版第1刷発行 英治出版 1800円