紀伊国屋のサザンシアターで、『社会起業家という仕事 チェンジメーカー2』出版記念トークショーが開催され、著者の渡邊奈々さん、ソフィアバンク代表の田坂広志氏、副代表の藤沢久美氏の鼎談があったので参加してきた。

前著『チェンジメーカー~社会起業家が世の中を変える』(2005年8月)で18人の社会起業家の紹介から2年経ち、今回は新たに20人を超える社会起業家が紹介されているそうだ。
田坂先生の最後のメッセージが印象に残った。
「是非、ご自身の日々の仕事と重ねて考えてほしい。働く人の全てが社会起業家となれる。草の根の大きなムーブメントとなり、一人ひとりの行き方を変えていくことが、社会を変えていくことになる。目の前の仕事をどう見つめるか、その先をどう見つめるか、人生のあり方を見つめることが大事である」


田坂先生の話の中で紹介された、世界の中での自分の収入の位置が分かるWebサイトは、面白かった。
為替の問題はあるが、どれだけ日本に生まれたことが幸せか、参考にはなる。
Global Rich List




社会起業家という仕事 チェンジメーカー2

社会起業家という仕事 チェンジメーカー2


<鼎談メモ>


○『チェンジメーカー』出版の経緯(渡邊)
・1975年からニューヨークに在住し、1990年代半ばから、日本で何か失われ始めた
 と実感していた。
・外人の知り合いから、「日本人には恵まれない人に対するコンパッションが無い」
 とそれまで、自分が全く気づいていなかった事(背中のホクロ)を指摘された。
・自分にも何かだきるかもしれない。人よりも自分が何ができるかを考え、写真が
 撮れ、海外にいてネットワークを持っているという強みに気づいた。
・2000年1月に、ソーシャル・アントレプレナーシップという言葉を始めて知った。
・2000年秋に、ハーバード大学でソーシャル・イノベーション・コースが開設され、
 教授に会いに行き、日本の若者に彼らの親とは異なるお手本が必要だと実感。
・7人の社会起業家に会いに行き、「社会起業家とは何か」というテーマで雑誌に
 10ページの特集記事を執筆。2002年〜2003年に社会が変わった。
・今までに、120人の社会起業家を雑誌等で紹介してきた。
・今回のパート2では、分野が重ならないように、日本人を5人に増やした。


○2つの潮流(田坂)
・ブレアのシンクタンク「デモス」が、社会起業という概念を持ち込んだ。
社会起業家は、単なるブームではなく、世界的な潮流となり、非営利団体
 持続していかねばならない。
・もう一方の潮流として、営利企業CSR活動があり、キャッシュフローをしっかり
 やっていた側が社会貢献が必要と言い始めた。
 →世界全体の社会のあり方を変えていく2つの流れが、同時に起こっている。


○チェンジメーカーの特徴(渡邊)
・共感能力が強く、物事に感謝をしている人が多い。
・生い立ち、性別、学歴も様々だが、共通しているのは、「自分は幸運」と感じ
 「人に何かしてあげたくなる」人が多い。
・日本人は、どう生きるかではなく、生きる事が目的になっている。
・日本人は世界の中の1つという感覚がつかめない。アフリカで苦しんでいる人に
 対して、自分の手足が痛いと思えるようになるためには、発展途上国を見に行く
 必要がある。


○情報革命の本質(田坂)
Web2.0により、1人の力が社会を変える可能性がでてきた。
・情報革命の本質は、「権力の移行」である。情報の主導権は、今まで強者が
 持っていた。
・1人でも社会に大きな影響を与えられる、志が実現できる社会になってきた。


○パート2で紹介された社会起業家


ミケル・ベスタガード・フライドセン氏(36歳)スイス人
 ・祖父が創業した制服メーカーに、19歳で入社し、人がやらない事をやって
  社会を良くし、命を救うことがビジネスになる事を世界中の人に知らせたかった。
 ・経常利益は500万ドル。顧客は国連とNGOで、品質で買われているマーケット
  がある。
 ・殺虫剤を練りこんだ蚊帳を開発(20回洗っても効果が変わらない)し、2006年に
  54万枚を生産、シェア7割(競合は住友化学)。
  →アフリカでは、マラリアで年間100万〜300万人の子供が死亡している。
 ・殺虫剤を練りこんだビニールシート「ゼロフライ」を開発。
  紛争地では、難民キャンプができるまで半年かり、その間に難民はマラリア
  死亡する。
  殺虫効果のあるビニールシートがあれば、仮のシェルターとなる。
  現在、衛星からビニールシートの位置が分かる仕組みを開発中。
 ・ウィルスとバクテリアを辞去する「ライフストロー」を開発。
  5枚のフィルターを透過させる事で、ガンジス川の水も飲料水となる。
 (田坂氏コメント)
  ビジネスは富裕層からお金を取ろうと考えがちだが、ビジネスを通して
  貧困を無くすことができる事を証明した事例。


カーン・ロス氏(32歳)英国人
 ・幼い頃から外交官になることを夢見て、エリートコースを歩んできた。
 ・9.11後のイラク戦争の前に、大量破壊兵器の調査団の一員として関わり、
  戦争を防ごうと努力するも開戦。同時に辞表を提出。
 ・先進国の国益が全て優先され、全てが決まる外交に不信感を持った。
 ・2003年にインディペンデント・ディプロマット(独立外交官)を設立し、
  小国と小民族にEメールだけで、外交アドバイスを始める。