今年最初に読む本として、この本を選んだ。
ドラッカーの生い立ちから、その著書が書かれた時代の背景説明まで、30年を超える専属関係となり主要著作37冊(改訳新訳を含めると42冊)を翻訳した上田惇生氏の解説による、ドラッカー入門書であった。
本書は、2001年6月より「週刊東洋経済」に8週間にわたって連載されたインタビュー「入門ピーター・F・ドラッカー 8つの顔」を大幅に加筆したものとのこと。
この本を読んでから、ドラッカーの著書に入ると、より理解が深まると感じた。
- 作者: 上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/09/23
- メディア: 単行本
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○ドラッカーと上田氏との出会い
・訳者が大学1年の時に、『現代の経営』と出会った。
・経団連事務局に就職。翻訳チームに所属し、1人で翻訳した『若き経営エリートたち』(W・ガザーディ著、1966年)の推薦の言葉を書いていたのがドラッカーであり、初めてドラッカーの文書を訳した。
・翻訳を手がけた本は37冊。全く手がけていないのは、初期のもののうち2作と小説2作のみ。
・2006年秋から2年にかけて発酵予定の「ドラッカー・エターナル・コレクション」12作品のうち、少なくとも10作品は訳し直す予定。
○何をもって憶えられたいか(『非営利組織の経営』より)
・13歳の時、宗教の先生である牧師が「何をもって覚えられたいかね」と聞いたが、誰も答えられなかった。すると「答えられると思って聞いたわけではない。でも50になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ」と言った。
60年ぶりの同窓会を開いた時、ひとりが「フリーグラー牧師の質問のことを憶えているか」と言った。みな覚えていた。この質問のおかけで、人生が変わったと言った。
この言葉は、自己刷新を促し、自分自身を若干違う人間として、しかし、なりうる人間として観る仕向けてくれる問いである。運の良い人は、フリーグラー牧師のような導き手に、若い頃そう問いかけられ、一生を通じて自らに問いかけ続けていくことになる。
○ものつくり大学の名付け親
・2001年に開学したものつくり大学の名付け親は梅原猛氏だが、英文名「インスティテュート・オブ・テクノロジスト」の名付け親はドラッカー
○マネジメントの役割
1.それぞれの組織に特有の社会的機能を全うし、事業を通じて社会に貢献すること。
2.組織に関わりをもと人達が生き生きと生産的に働き、仕事わ通じて自己実現できるようにすること。
3.社会的責任を果たすこと。世の中に悪い影響を与えないこと。
○事業は何か
・あらゆる組織にとって最も重要なことは、自らの事業は何かを知ること。
→ドラッカーがコンサル時に最初に聞くことが、「お宅の事業は何ですか」。この一言でコンサルの9割は解決する。
○事業の定義
・事業を定義する上での3つの要素
1.事業環境→市場と技術の状況
2.自らが使命とするもの→事業の目的
3.自らが得意とするもの→強み
・事業の定義が有効でなくなったことを教えてくれるものは2つ
→予期せぬ成功と予期せぬ失敗
○ドラッカーのマーケティング論
・顧客を創ることをマーケティングといい、販売発動を不要にすることがマーケティングの理想
・これからはマーケティング以外、あらゆるものがアウトソーシングの対象となる。
・組織の存在価値は組織の会部の世界にある、組織の成果は外部にある
○イノベーションの7つの種
・産業の内部で起こること
1.予期せぬこと全て(予期せぬ成功も含む)
→予期せぬことは全て調べて報告する仕組み、仕掛けを作る。変な客が来たら、それが本当の客かもしれないと意識を持つ。
2.ギャップ→無駄なサービスをやめ、短時間に特化した「QBカット」
3.ニーズ→必要は発明の母
4.産業構造の変化→現在のIT産業
・産業の外部で起こること
5.人口構造の変化
→今日の高齢化の進行はイノベーションの宝庫。自らを高齢者と意識していない高齢者、新たな労働力としての高齢者
6.意識の変化→健康意識が、あらゆる種類の健康産業を生み出している
7.発明発見→これがイノベーションの種としては一番難しく、打率も一番低い
○利益とは
マネジメントにとって利益とは、目的てはなく、明日さらに優れた事業を行っていくための条件であり、仕事ぶりを測るための尺度。
○リーダーに必要な基本的な能力
1.人の言うことを聞く意欲、能力、姿勢。聞くことはスキルではなく姿勢。
2.コミュニケーションの意欲。自らの考えを理解してもらう意欲。その為には大変な忍耐が必要。
3.言い訳をしない。自分が間違ったと言えなければならない。
4.仕事の重要性に比べて、自分など取るに足りないことを認識する。
→自ら仕事の外におかないと、大儀のためと称して、自らのために仕事をし、自己中心的となり、虚栄の虜となる。
○創業の為の原則
1.市場に焦点を合わせる。顧客が主役。
「ベンチャーが成功するのは、多くの場合、予想もしなかった客が、予想もしなかった市場で、予想もしなかった製品やサービスを、予想もしなかった目的のために買ってくれると時である」
(『イノベーションと起業家精神』1985年)
2.資金について計画をもつ。
事業は成功すればするほど、現金を必要とする。最初から利益を考えてはならない。
本当に成功した時には、事業が資金構造を超えて成長してしまうことを知り、その場合には資金構造そのものを変えていかなければならない。
3.トップマネジメント・チームを構築する。
事業にとってなされるべきことは山ほど増え、一人の創業者が成し得ることには限界がある。
4.創業者が自らの役割を規定する。
時器用にとって必要なものは何か、そのうち自らが抜きん出て貢献できるものは何かを考え、自ら何をしたいかを考えるのは後回しにする。
5.尊敬できる相談相手を社外に持つ。
→これこそが、創業に成功するための最大条件。