1月6日に三貴商事主催「INV@ST 新春経済講演会」に参加してきました。

竹中平蔵氏、藤巻健史氏の二人によるダブル講演で、大変勉強になった。
竹中先生については、今年初めての講演であり、また大臣退任後3ヶ月間はマスコミに出ないと決めていたとのことで、「ナマ竹中」を見れる貴重な講演会であった。
藤巻氏の講演は今回で3回目であったが、いつ聞いても全くブレない「円安論者」であり、イトーヨーカ堂の3980円の4点セットで極めた宣伝広告塔ぶりと、ポジショントークが入った歯切れの良い偏った見解には好感が持てた。


<竹中平蔵氏の講演メモ>
安倍内閣3ヶ月で出てきたホコロビ
 ・社会保険庁改革:当初は6分割で強制徴収の権限を国税庁に「移管」→いつのまにか「委託」に変更してしまった。
  委託だと社会保険庁に強制徴収の権限は残ってしまうことになる。
 ・グレーゾーン金利(出資法と貸金法のギャップ金利):多重債務者保護を理由に貸出金利の上限を下げた。
  →その結果、貸金業者の廃業が相次いでおり、社会問題を引き起こしかねない状況。
 ・政府系金融機関の改革の行方が怪しい
  →役人にとって最大の天下り先である為、必ず骨抜きにされてしまう
 ・デフレが継続している
  →政府は2006年度の名目成長を2%としたが、現時点で達成は無理であることが判明している

○2007年の日本の社会経済
 ・2007年問題:郵政民営化団塊世代の大量退職(退職金支払が前年より2兆円増、高給取りの社員が退職し、企業のコストダウンが図れる)
  団塊世代退職マーケットとしては、観光産業が有望。
   →日本はまだ人口比6%しか観光産業に従事していないが、米国は12%が観光産業に従事している。
   →日本の大学には観光学部が少ないが、オーストラリアでは2/3の大学に観光学部がある。
 ・マクロ経済的には、ゆるやかな回復が続くことを予測
  1.米国経済:不動産バブルがいつ破裂するのか?その結果、マイナスの資産効果がどう影響するか注目したい
        →現在の米国経済成長3%から1%程度は下がり、2%になると予測する
  2.中国経済:当面は大きな減速は無いと予測
        中国の不良債権は25%あると言われているが、政治イベント(北京オリンピック、上海万博)までは顕在化させないだろう
        現在の中国の1人当りGDPは2千ドルを超えたが、中南米でも2千ドルを超えたタイミングで民主化が起こった。中国の経済格差はすさまじい。

○中国とインド
 ・日欧米の全人口が6億人に対し、中国・インドの技能労働者だけで6億人
 ・19世紀初頭には、世界のGDPの中国が29%、インドが16%と両国で45%を占めていた
 ・世界の華僑が6000万人、印僑が2000万人(海外に出ているインド人の内1/3が大卒)
 ・インドは2030年に中国の人口を抜き、2050年には日本のGDPの4倍と予測される


<藤巻健史氏の講演メモ>
○世間話
 ・東大の伊藤隆敏教授と慶應竹中平蔵教授は一橋大の63年入試組み(東大入試が無かった年)。
  →藤巻氏も同年に一橋を受験したが、結局、一橋学院に入学(浪人)

○藤巻氏が取っている現在のポジション
 ・長期固定金利で銀行から借りれるだけ借りて、不動産、株(外国個別株、日経225、債権先物)、外貨建て商品に投資している。(パプル期に殆どの人が取っていたポジション)

○バブル(1985年〜1990年)のオサライ
 ・バブルの原因は日銀の過剰流動性の供給→資産価格が上昇(株4倍、土地10倍)→資産効果実体経済が上昇
 ・経済指標の「CPI(消費者物価指数)と株価の推移

CPI 年末株価
1984 2.2 11,542
1985 1.9 13,113
1986 0.0 18,701
1987 0.5 21,564
1988 0.9 30,916
1989 2.9 38,916
1990 3.1 23,848
1991 2.8 22,984
2004 -0.1 11,489
2005 -0.3 16,050
2006 0.0 17,056

 1985年〜1988年までCPIが1%以下(デフレの状態)であっても株価は上がっていた。
 →CPIは経済の実体を現している訳ではない。土地と株の上昇が先行し、遅れてCPIがキュット上昇する

○日本は借金まみれ
 ・日銀は日銀券を大量に発行(日銀券年間発行高:1991年32兆円→2005年74兆円)
 ・そして、日本国債を買い支えてきた(日銀のバランスシート:1996年62兆円→2005年156兆円)
 ・日本の赤字:バブル時は200兆円→現在は830兆円
 →日本は歳出をストップさせ、増税とマイルドな資産インフレの舵取りしか対策が無い

○日本の今後の景気を見る上での注目点
 ・為替が経済に大きく影響する
   円安ドル高→資産価格が上昇→景気上昇
   円高ドル安→資産価格が下落→景気下降
 ・中国経済が好調なのは、為替が極端な人民安となっているからで、人件費が安いからではない
   1980年代1元=160円→2004年1元=15円 (円が極端に強くなりすぎた)
 ・米国経済は、不動産バブルを軟着陸させ、ゴールデンパスに入るだろう

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