日経新聞主催の「経営者未来塾」で内田和成先生が講演されるということで、東商ホールまで行ってきました。講演テーマは「異業種格闘技」。
「世の中で起こっている変化が、自分のビジネスにどう影響するのか、違った視線で見直すことで、新たなビジネスチャンスが見えてくる」という閉めのメッセージが大変印象に残った。
内田先生の講演を、今日というタイミングで聞くことが出き、目の前がサッと開け、自分の運の良さに驚いている。
早速、「異業種格闘技」というキーワードを念頭に、ビジネスモデルを考えていきたい。
<講演メモ>
○異業種格闘技の定義
「異なる事業構造を持つ企業」が、「異なるルール」で、「同じ顧客ないし市場」を奪い合う競争。
・同業種との闘いは、相手の手の内、業界のルールが分かるので組みやすいが、手の内が分からない競合とは、戦い方が分からない。競争のルールが異なる闘いとなる。
⇒成功企業ほど、新しく登場してくる異業種に対応できない
○日本に押し寄せる3つの波
1.経済の成熟化:1995年で労働者数はピーク、2005年から人口減
→米国・中国ではなく、成長が止まっている英国、フィンランド、シンガポールから学ぶべし。
2.情報革命の進展
3.競争のグローバル化:今後、ドメスティックに戻ることは無い
⇒今までの定義では生き残れない事業が増える一方、新しいビジネスチャンスが生まれる
○セブン銀行のビジネスモデル
・早大生に「現金の引き落とし先」をアンケートすると殆どがコンビニのATMを利用と答える。
・セプン銀行は2006年9月中間期(半期)で、売上372億円、経常利益129億円、利益率35%と、銀行としてはバツグンの業績。
しかし、法人貸付業務、預金集めをしていおらず、「ATM場所貸し業」で他行から手数料が収益源。
そもそもATMは、住友銀行が店舗コスト削減・合理化目的で、他行に先駆けて導入したのが始まりで、顧客ニーズでは無かった。
・キャッシュカードは24種類あり、手数料が安く若者に受けている。
→もし、セブン銀行と新生銀行が手を組んだら、メガバンクはどうなるのか???
○異業種格闘技の事例
音楽業界
・今まではレコード会社と再生機器(ウォークマン、CDプレーヤー等)メーカーがWin-Winで互いに住み分けしていた。ところがiPod、iTunes Store(1日100万曲のダウンロード)の登場で、業界が混乱。
・CDが存在したからレコード店の商売が成立していたが、曲がダウンロードに移行するとレコード店が不要となり、再生機器がiPodの1人勝ちとなってしまう。
・1人しか買わないクズ曲でも必ず売れる(ロングテールの法則)
→リアル店舗では在庫管理の点から売れ筋だけを販売する。アマゾンでは、競合の大型リアル書店では売れない本の売上が1/3を占めている。
・アルバムの場合、ミュージシャン側はSDで聞いてもらいたい曲の順番に収録していくが、iTunesでは顧客が好きな曲だけ1曲単位で買っていく。
・iフォンの登場で、携帯端末での着うたフルが1〜2年後に主流になってもおかしくない。
出版業界
・フリーペーパー「R25」の登場。80万部発行。1つの記事を800字で説明しており、若い人に受けている。
→既存の出版社もフリーペーパーの発行をすぐに出来るが、既に築いたチャネルと営業部隊を捨てられない。
ソフトウェア業界
・Google Docs & Spreadsheetsの登場。ソフトもデータも全てWeb上に存在する無料のワードとエクセル。
化粧品業界 VS トイレタリー業界
・花王がソフィーナで化粧品シェアUP
・資生堂がシャンプー「TSUBAKI」の投入でシェアトップ
→トイレタリー業界の広告は、有名女優を出さないのが常識だったが、資生堂は化粧品業界の広告戦略で有名女優を6人登用した。
ファーストフード VS コンビニ
・戦い方は違うが、同じ顧客を取り合っている
小口現金決済 VS 電子マネー VS 携帯
→携帯には全ての機能が入ってくる
○ネット企業3社の収益構造
・ヤフー:広告収入45%、物版30%、その他25%
・楽天:金融55%、物販30%、その他15%
・米グーグル:広告99%
→ヤフーと楽天は元々儲けの仕組みが違う。ヤフーは広告収入モデルなので訪問客が多いほどクリック数が増えるが、楽天は買い物をする人だけに訪問してもらいたい。
→ヤフーとグーグルは、同じ広告収入モデルなので、ガチンコ勝負。
○対応策の考え方
1.バリューチェーンでビジネスを捉える→全体を鳥瞰し、消費者の視点から物事を見る
・置き換えられるモノは何か?
・省略、スキップできるモノはあるか?
・楽しみ方の選択肢が増えるモノは何か?
・新たに生まれたモノは何か?
2.ビジネスモデルを考える
・顧客に何の勝ちを提案するか?
・儲ける仕組みはどうなっているか?
・強みを持っているか?
3.異業種格闘技の戦い方
・トールゲート:料金所をいかに作るか? チャリンチャリン・モデル。マイクロソフトのWindows
・イネーブラー:料金所を普及さす為の撒き餌。
→インクジェットプリンター本体は安いが、ランニングコストとなるインクが実は収益源。
・エンラージメント:料金所の周辺分野でさらに巻き上げる。(クロスセリング)
→サービスエリアで食事をさせる。マイクロソウトのOffice、アマゾンの家電販売
・ブロックプレイ:バイパスを作って競合の料金所を封じ込める。
→ブラウザー専業のネットスケープに対し、Explorerを無料配布
○まとめ
・異業種格闘技の本質はビジネスモデルの争い
→異なるルールは異なる儲けの仕組みから来ている
→既に成功している木木用ほど、失うものが大きい
・異業種格闘技で勝ち残るためには、
自社の業界のバリューチェーンを描いてみて、
競合相手の儲けの仕組みを理解し、
自社の強み・弱みを再認識し、
必要に応じて自社のビジネスモデルを再構築する
→本当に同じ顧客を奪い合っているか?については十分検討する
その他、質疑応答
○社内変革をどうすればよいか?
→組織の変革には、2つが必要。
チャンピオン:世の中の変化を信じて行動ができるが、社内では変わり者
ゴツドファーザー:ある程度の立場からチャンピォンを支援できる
(自分はドラマ「ハケンの品格」の篠原涼子と松方弘樹だと気づきました!!)
→トップが分かってくれないと英雄待望論ではなく、自分が今のトップに仕掛けていくしかない
新人、変わり者、好奇心旺盛な人が変革者候補となれることが多い
○同業種間競争はどうすればよいか?
→顧客のアンメットニーズ(満たされていないニーズ)や、仕方ないと我慢している事は無いか考える
アルミサッシのトステムは、多品種である業界の常識ではリードタイム2週〜1ヶ月の所を、在庫を増やすことで、商品の9割を翌日納品できるようにした。
○第三者評価サービスのニーズはどう思うか?
→情報革命により、桁違いの情報過多、情報洪水社会となってしまっており、ナビゲート・アドバイスをしてくれる存在が必要となっている。
価格.com:価格という切り口でナビゲート
@cosme(アットコスメ):消費者にカスタマイズした情報を提供
→今でもPtoP(CtoC)のビジネスで稼ぐビジネスモデルは確立されていない
オークションのeBayのみ。BtoCは売り手と買い手が明確に分かれていたが、CtoCはお互いが売り手であり買い手となる。
mixiは600万人が登録している国内最大のSNSだが、騒がれるほど大したビジネスになってはいない。
mixiの売上推移 百万円
売上 | 営業利益 | |
2003年3月期 | 114 | △4 |
2004年3月期 | 303 | 8 |
2005年3月期 | 739 | 164 |
2006年3月期 | 1,893 | 912 |
2006年9月期 | 1,947 | 879 |
- 作者: 内田和成
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2006/03/31
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