「なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?誰も教えてくれなかった!裏会計学」の著者である資金繰りコンサルタントの小堺桂悦郎氏の本。自分で事業を始める前に読んでおいて本当に良かったと思えた本である。借金で悩んでいる人、そうなる前、そうならないための本。

早いうちにバンザイ三部作の残りの2冊を読んで置きたいと思う。


借金バンザイ!―税理士は教えてくれない!「自転車操業」の極意

借金バンザイ!―税理士は教えてくれない!「自転車操業」の極意


<読書メモ>

○ほとんどの会社が「自転車操業
・月商の1カ月分の預金残高がないと自転車操業
  →翌月の支払いがね翌月の売上の入金がないと支払えないということ。
   決算書が黒字であろうが、法人税を払っていようが関係ない。
自転車操業には自転車操業なりの「借り方、返し方」がある。
・経営が順調な時は「資金調達」と言うが、返済がきつくなると「借金」という。
・買掛金、手形も同じで、貸借対照表の負債に載っているのが借金。


○貸す側を理解すれば、借りられる
・公的制度融資、信用保証協会つき融資にしても、結局は銀行が審査する。
・銀行が融資取り組む際には、決算書や制度ありきではなく、「貸したい商品」と「ノルマ」の2つの貸したい理由がある。
・ボーダーライン上の事業意欲のある貸したい社長に対し、決算内容や業況から積極的に好材料を探して融資する。
・銀行が回収に入る瞬間は、①逆ノルマ(回収促進)、②危ない兆候か見られる融資先、③真面目な社長のタイプ(悪い状況も取引銀行に報告してしまう)
・回収の極意は「他から借りさせてでも返させる」


○「借りる」「返さない」の交渉術
・融資が出るかの見極めのポイント
  ①運転資金の場合、融資残高が月商の3ヶ月以内であれば融資は出る
  ②決算書の赤字は「本当の赤字」か? 過去の不良資産の除去ではないか?
    →既存の融資先であれば、決算書の見た目の赤字は問題にならない。
・銀行側に、信用保証制度(「セーフティネット保証」「借り換え保証」)に該当することを判断させる。
・信用保証協会は、既存の融資取引先が業績不振に陥った時に継続融資をする為にある。
・支店長クラスの年齢であれば、基礎と実務を身につけており資金繰り表を読めるが、80年代半ばいこうの銀行員はバブル景気で銀行員スタートでダメ。30代はバブル崩壊で回収の時代で全然ダメ。
・銀行との借入交渉をラクにするには、決算で赤字を出す前に、早めのスタートしかない。
・高利で他から借りてきてまで銀行に返済するならばリスケジュール(借金の返済額を減らす)する。
・本当に借金返済できる金額は、償却前利益(減価償却費+税引き後登記利益)の範囲まで。
・リスケをする目安
  ①償却前利益が返済額に比べて少なすぎる
  ②赤字が2期続いたら、返した手貸しは戻ってこない
  ③短期借入の手貸しである折り返し融資が遅れるようなら、減るようなら
  ④「1年間で返すべき金額」と「償却前利益」が1桁違ったら
・リスケ交渉は、資金繰り表、改善計画を作り、銀行への支払いを延滞する
 →売掛金の入金口座を別の銀行に変更しておかないと、返済分を引き落とされてしまう
 →リスケ後、赤字を減らしていき、お金の回転を良くする為に、現金経営に戻す。
・赤字を止める時の注意点
  ①赤字の店を急に閉めない→仕入れ代金だけが残り、売上が入らなくなる
  ②急に宣伝費を削らない→宣伝費をコストカットしたことで売上が落ちてしまわないか慎重に
  ③成績の悪い営業マンをクビにしない→原価と給料以上の売上を上げていれば首切りのタイミングを計る。
  ④大口の掛売りお断り→掛売りの売上を増やせば利益は増えても、資金繰りは苦しくなる。


○イザと言う時の「自転車操業」のウラ技
・手形に記載された支払期日に、自社の当座預金に見合う預金残高が無ければ「不渡り」
・どうしても決済が難しくなったら、ジャンプしてもらう
 →振り出した手形の代わりに新しい期日の入った手形を用意して取り替えてもらう。
  もらった手形を3ヶ月も抱えていられる会社は、そうそう無いので、なかなかできない。
  手形のジャンプは、オキテ破りの裏技なので、親しくて口の堅い相手に限ること。
  台風手形は決済期日までに120日。お産手形は10ヶ月。
・小切手のスキップをさせてもらう
 →現金同様の小切手を手形と似た使い方をする。
  普通は支払う日の日付が記載されるが、1週間後、半月後の振出日の小切手を渡す。
  ただし、将来の日付であっても、相手が取り立てに回したら換金されてしまう。
・手形を使ったご法度中のご法度、禁じ手である資金繰り「融通手形」
 →相手の資金繰りを助ける為に、お金を貸すのと同じ行為でね実際の商取引を伴わない手形取引。
  受け取った方も振り出してくれた方に、すぐに振り出してもらった期日の直前期日で、手形を振り出す。
  もし助けてもらった方が期日に資金を用意できなかったら連鎖倒産となる。
・どうしても銀行からの借入では間に合わない時は商工ローンから借りる
 →100万円を借りても3ヶ月だけであれば、金利が30%でも7〜8万円の金利支払いで済む。
・銀行から借りて商工ローンに返済する
 →銀行の事情で貸したがる時がある。
  都市銀行の法人向けビジネスローンは資金使途は自由で審査期間は短い。
・借り換えのローテーション
  先発は地元の信金、中継ぎは国金、抑えの切り札が都銀のビジネスローン
・手形と小切手の使い方のポイント
  ①手形と小切手の支払期日はそろえない
  ②手形で借りると銀行にバレる
   手形は受け取った人が手形の裏面に指名を記載するようになっており、支払期日が来ればその手形が振出銀行に戻る為、当座取引銀行に裏面を見られる。
   融資を受ける銀行と、当座取引する銀行を分ける。
  ③手形割引は別の銀行でやる
   融通手形の場合、その手形の割引を融資を受けている銀行にしてもらってバレたら追加融資はストップされる。


○「借りるため」の経理と決算のやり方
経理処理によっては借りられるものも借りられなくなってしまう
商工ローン経理処理
  ①手形金融の場合(自社の振出手形を切って、将校ローンから借りた場合)
   100万円を3ヶ月借りたとすると、借りた日から3ヶ月後を支払期日とする手形を振り出す。
   同時に、会社の預金口座に100万円から3ヶ月分の金利を差し引いた金額が振り込まれる。
   仮受金か、役員借入金とし、金利は雑費(消費税は非課税扱い)、販売手数料、○○促進費にする。(支払利息にすると商工ローンから借りたのがバレる)
   税理士には正直に伝えておく。
  ②社長が商工ローンから借りてきた場合
   毎月の返済額は、会社から持っていってもOK。
商工ローンを使っているのが銀行に知られたら、融資が止まり、銀行から借りて返済することができなくなってしまう。
・「借りられるための」バランスシートの作り方
  ①資本の部はプラスにする。
    マイナスならば資産で負債を払いきれないので理論上破綻。
    売上は損益決算書を見ないと分からないが、直前期の決算が赤字か黒字かがわかる。
  ②資産と負債のバランス
    流動資産に対し流動負債がどうか、長期借入金と固定資産のバランスは?
  ③資産と負債の前期との増減
    売掛金・在庫・買掛金が前年より大きく増えたり減ったりしていれば黄色信号。
  ④架空資産と時価評価
    金額が大きい仮払金、役員への貸付金、減価償却していない設備投資は実態のない資産


○借金の法則
・借金の成長曲線
  創業期:家族、友人、知人、信金、信組、国民生活金融公庫
  成長期:本来はこのタイミングで設備投資・運転資金を投入
安定期:ここで銀行がアプローチしてくるので、衰退期に払えなくなる。
衰退期:お付き合い融資
・成長曲線の途中にいるならば、早めの資金手当てが大事。
・1千万円の自己資金で起業するならば、使うのは300万円にして、残り700万円は政府系創業資金融資から借り、700万円は隠しておくくらい図々しく生きるべき。