米国大使館・東京アメリカンセンターと立教ビジネススクールとの共同企画によるジャーナリストの「ダニエル・ピンク氏との意見交換会」に参加してきた。
ピンク氏の今回の来日の目的テーマは、米国で大人気の「マンガ」で、5週間前から来日しており、後2週間滞在されるらしい。
講演の中で、自身による翻訳本の紹介があったが、「何故か日本では、大前さんの顔写真が前面に出ている。不思議だが、自分は売れてくれれば良い」と言っていたのには笑えた。
- 作者: ダニエル・ピンク,大前研一
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2006/05/08
- メディア: 単行本
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<講演メモ>
○今、求められている能力
・中西部のつまらない地域に住む両親のアドバイスで、自分は25年前にロースクール
に行ったが、これは人生における大失敗であった。
→「上位10%」という言葉は良く聞くが、「下位10%」の成績だった。
・そのアドバイスとは、「良い成績を取って、良い大学に行って、経済的・地位的に
成功すれば、中流の生活がおくれる」と全世界の先進国の両親は考えていた。
・そのアドバイスの通り、ある時期までは、弁護士、会計士、エンジニア等に必要な
能力が、生活を保障していた。
・しかし、現在は、もっと重要な能力が求められている。
○右脳と左脳の役割
・脳はエレガントで効率的で、様々な作業の役割を左右の脳で分担している。
・左脳は、分析・論理的にチャートゆグラフを使用して、正しい答えを導き出す
役割を担い、生きていく上で必ず必要だが、それだけでは十分ではない。
・右脳は、統合的に全体像を捉え、デザイン力や共感を生み出す役割を担い
今後、重要になってきている。
○3つのキーワード
Asia(日本以外):
・インドのムンバイでは、SEの年収が1万5千ドルと、米国ではファーストフードの
アルバイトの年収。米国のSEは年収6万ドル。
→ちなみにムンバイのIT企業から100m離れた所はスラム街である。
・米国のホワイトカラーの仕事が、段階的に確実に海外にアウトソースされて
おり、政治問題化しつつあるが、真剣に問題として受入られておらず、
大部分の国民は気づいていない。
・例えばインドの10億人の国民の15%の1億5千万人が、先進国のホワイトカラー
のレベル(中の上)に達したらどうなるだろうか?
→日本の人口より多く、米国労働人口は1億4600万人と同じになる。
・順序に従えば答えが出るルーチンワークの仕事は先進国では、既に失われ
つつあり、いずれは無くなる。
ホワイトカラーの仕事の一部である経理は、左脳の仕事である。
・P&Gは米国ではエンジニアをリストラし、デザイナーを増やしている。
→これからは、右脳の仕事で勝負する必要がある。
Aitomation(自動化):
・機械は筋肉の機能を代替し、ソフトウェアは左脳の機能を代替した。
自動化されて、プルーワーカーと一部のホワイトカラーの仕事は無くなった。
・米国の離婚率は50%だが、その弁護士料として2500ドル必要だった。
しかし、CompleteCase.comという1/10のコストで離婚手続きの書類を作成
できるWebサービスが登場。
・他にも14ドルで遺言を作成できるWebサービスもあり、会計ソフトの
「TurbTax」は39ドルで、2100万人が使用している。
Abundance(豊かさ):
・豊かな社会では、所有物が多すぎて、個人が倉庫を借りている。
・デザイナー・トイレブラシは、世界で誰も作れず、顧客の望みを叶える
デザインであり、もはや機能のみでは勝負できない。
・デザイナーハエ叩きは、原料のプラスチック代は5円程度だが、14ドルで
売られている。その差が高い利益率となる。
・殆どの価値は効用(Utility)からではなく意義(Significance)から生まれて
いる。
○今を生き残るための3つの質問
1.海外より安くできるのか?
2.コンピューターより早くできるのか?
3.効用と共に意義を提供しているか?
○経済のパターン
1.18世紀:農業の時代・農業経済(農民)
2.19世紀:工業の時代(工場労働者) →豊かな国が貧しい国から輸入
3.20世紀:情報の時代(ナレッジワーカー)
4.21世紀:コンセプトの時代(創造する人、他人と共感できる人)
→「第三の波」のトフラーの考え方に「第四の波」とも言える事が
起きている。
ちなみに、「ハイコンセプト」(邦訳書名)を当初「第四の波」にしたいと
大前さんからトフラー氏に相談したら、当然だが断られた。
○GMのRobert.Lutz副社長のメッセージ
・GMは芸術、芸能ビジネスをやっている。車は動く彫刻である。
○右脳の創造に関するキーワード
1.デザイン
2.物語
3.シンフォニー(全体の調和)
4.共感
5.遊び心
6.生きがい
→ハイコンセプトは、人間的な部分であり、人間の能力で本質的なもの。
全ての分野で右脳的な考え方が必要となっている。
○様々な業界における事例
・商品パッケージ、どこで作られたか、農場や会社の物語をつけて、
ほかの商品と差別化を図ることで、マージンを厚くすることが可能。
・ストーリー・ベース・マーケティングにより、スートーリーに余計に
お金を出す人がいる。
・トヨタのプリウスは、決してガソリン代の節約になっていない。
→プリウスを購入する層は、「空気を汚さない生活をしたい」と考え、
そのことに意義を感じてお金を払っている。
・形の無い商品である保険、特に生命保険は、100年位前に作られた成熟
産業であり、同じ数学の計算式により商品が開発されるコモディティ商品。
Nationwide Insurance社は、Webサイトで「弊社がどのように役に立ったか、
教えて頂いた中から、良い物語をタイムズスクウェアに飾る」とし、
ハイタッチなサービスを始めている。
まだ満たされない、気づいていないニーズを探し出すことで、チャンスは
あるかもしれない。例、賃金保険など。