以前から読もうと思っていた本を漸く読むことができた。社会起業家とは何か、様々な事例が紹介され、ビジネスの社会化、NPOのビジネス化の動きが良く理解できる。

社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流 (岩波新書)

社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流 (岩波新書)


<読書メモ>


社会起業家の潮流
 ・1980年代初頭に英国でその概念が生まれ、福祉国家に代わって自立型の
  福祉システムを構築、停滞した社会を活性化する存在として注目された。
 ・現代の社会起業家はね単に収入を得る手段ではなく、自己実現の場と
  考えている。
 ・地球規模の課題や地域社会が抱える課題に対して使命感を持って挑み、
  事業を行っている。


NPOのような企業「ベリー&ジェリー」
 ・1978年、米国北東部バーモント州で、ガソリンスタンドを改装して創業。
 ・ベン・コーヘンとジェリー・グリーンフィールドの二人の幼なじみが
  創業者。
 ・5ドルの通信教育でアイスクリームのノウハウを得た。
 ・地球環境や地域コミュニティの向上、消費者の健康的な生活に貢献する
  プロジェクトを行っている。
 ・1988年、「スモール・ビジネス・オブ・ザ・イヤー」を受賞。
 ・2000年、ユニリーバに約3億3千万ドル(630億円)で買収された。


○高い経営手腕のNPO「コモングランド」
 ・代表はロザンヌ・ハガティー
 ・1990年に29歳で、NPOコモングランドを成立。
 ・ニユーヨーク市、JPモルガンなどから約3600万ドル(39億6千万円)の
  資金を集めニューヨークにホームレス向け住宅として「タイムズ・スク
  ウェア・ホテル」を再生。
 ・NPOでありながらデベロッパー業のような大型不動産開発を手がける。
 ・職員数は170人、2002年末の総資産は1823万ドル(約20億円)。収入
  内訳は6割が入居料。その他、自治体の就職支援制度運営請負料、
  助成金、企業・個人からの寄付金。
 ・ロザンヌの年収は14万5千ドル(1595万円)。


社会起業家の特徴
 1.地域コミュニティや世界の多様なニーズに応える社会的な使命感を
  根底に抱きながらも、事業を実践する課程では、巧みにビジネス・
  テクニックを応用していく。
 2.資本力は弱いながらも、次代を鋭くとらえたアイデアや創造性に
  あふれた組織を作る。
 3.パートナーシップを重視する。同じ価値観を共有する組織と有機的に
  結びつき相乗効果を考えながら、目的を達成するためのネットワークを
  実現していく。
 4.労働を収入の手段としてだけではなく、自己実現の手段でもあると考える。
 5.事業の所在地の地域住民から、遠く離れた発展途上国の国民までを、
  利害関係者と見なし、彼らの価値観に根ざした商品やサービスを提供する。
 6.長期的な効果を重要視する。短期的な利益を犠牲にすることがあっても、
  長期的な恩恵を選ぶことで、最終的にはステークホルダーの満足が得ら
  れると確信している。


NPOの収入源『NPO(民間非営利組織)とは何か―社会サービスの新しいあり方
 (電通総研)

- 米国NPO 日本NPO
事業収入 51% 60%
政府助成金 30% 38%
民間寄付 19% 1%


○良識ある消費者が社会を変える
 ・「グリーンページ」コープ・アメリカが開発
   環境にやさしい製品やサービスの提供企業を収録 
 ・良識ある消費者を総称する名称「LOHAS(ロハス・Lifestyles of Health
and Sustainability)」
  米国ロハス市場:2268億ドル(24兆9480億円)
  米国ロハス消費者は、国民の32.3%、6800万人。


○ビジネスの社会責任への取り組みを助ける2つの団体
 ・BSR(ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ)
   1992年サンフランシスコで、ローリー・ハメル氏が設立。
   現在、1400社が会員となり、会員の総収入は1兆5千億ドル、従業員数
   500万人以上。
   目的は「責任ある商慣行や事業改革、協力体制を企業側に促すことに
   よって、校正で持続可能な世界を作り出すこと」
 ・SVN(ソーシャル・ベンチヤー・ネットワーク)
   1987年、サンフランシスコで、設立された。
   現在、会員数は4百名超。7割が企業で、3割がNPO。  


○未来の社会起業家の育成システム
1.大学院MBA課程
 ・米国では、毎年10万人のMBAが誕生する。
 ・2001年〜2003年にかけて「倫理」「企業の社会的責任」「持続可能性」
  という授業を必須科目としているMBA課程は、34%→45%に増えた。
  また選択科目として履修できるのは70%増加した。
  (『ビジョンド・グレー・ピンストライプス』調査。米国アスペン研究所&
  世界リソース研究所)
 ・2003年の報告書で、最先端の取り組みをしていると評価された6校のMBA
   ジョージ・ワシントン大学(ワシントンDC)
   ミシガン大学(ミシガン州アナーバー)
   ノースカロライナ大学(ノースカロセイナ州チャペルヒル)
   スタンフォード大学(カリフォルニア州スタンフォード)
   イエール大学(コネチカット州ニューヘーブン)
   ヨーク大学(カナダ・トロント)

2.グリーンMBA
 ・環境や社会問題に配慮したMBA課程が新設している。
 ・「持続可能な事業行為のためのMBA」(ベンブリッジ・アイランド・
  グラジュエート・インスティチュート)
 ・「グリーンMBA」(ニュー・カレッジ・オブ・カリフォルニア)
 ・「持続可能なマネジメントMBA」(プレシディオ・ワールド・カレッジ)


○米国の社会起業家
 ・イヴォン・シュイナード(パタゴニアの創業者)
  1973年にカリフォルニア州ベンチュラにて創業。
  売上の1%か税引前利益の10%のどちらか高い方を環境への投資に使う。
  2002年には240万ドル(約2億6400万円)を300以上の団体に寄付している。
  従業員には自分で選んだ社会貢献活動をする為の有給休暇が与えられる。
  ハイブリッド・カー購入の際には、会社から2千ドルの援助金が出る。
  「死滅した惑星にビジネスは成り立たない」(byイヴォン)  

 ・アリス・テッパー・マーリン(CEP・経済優先順位研究所、SAI・ソー
  シャル・アカウンタビリティ・インターナショナルのCEO)
  1969年にCEP設立、1996年にSAIを設立。
  『死の利益』『紙の利益』『よりよりい世界のためのショッピング』
  CEPのパートナーの旭新聞文化財団は毎年『有力企業の社会貢献度調査』
  を出版している。
  プライスウォーターハウスクーパーズの2000年調査では、消費者の64%
  が商品の生産方法を知りたいと考え、73%が企業の社会性が購買の意思
  決定を左右すると答えている。

 ・ジュブィ・ウィックス(ホワイト・ドッグ・カフェ)
  1983年、フィラデルフィアの自宅1階で創業。
  「食べることは、政治的な行為」
  顧客、地元コミュニティ、従業員、自然環境の分野での貢献を理念に
  掲げる。
  

○日本の社会サービス分野
 ・公共サービス、高齢者福祉サービス市場は100兆円超。GDPの約2割。
  年金、国民医療、福祉、公共教育、環境、文化芸術で、支出の大半は
  税金と保険料で賄われている。
 ・効した社会サービスの巨大市場を政府任せにせず、第二セクター、第三
  セクターの手で充実させていこうとするのが社会起業家


社会起業家を支援する新しい動き
 ・片岡勝プロジェクト
   1985年 月刊誌『オルタナティブ』を発刊。
   1996年 フェアトレード・プロジェクトを開始。「第三世界ショップ
   「コミュニティ・ビジネスカレッジ」地域社会のビジネス・リーダー育成
   「市民バンク」担保や実績が無くても地域貢献事業へ融資を可能にした
   「女性のための世界銀行」国連・世界銀行が支援する世界組織の日本支部

 ・ソフト化経済センター(2005年12月解散)
   「社会起業家」研究組織として草分け。社会起業家賞を設けた。

 ・ETIC起業家志望者のメンターNPO
   
 ・社会起業家フォーラム
   ソフィアバンクが中心となり設立

 ・ソーシャル・アントレプレナー研究会
   日米の社会起業家の実態に詳しい市川裕康氏が設立

 ・センター・フォー・アクティブ・コミュニティ(CAC)
   社会起業家ネットワーク組織
 
 ・その他の組織
   UFJ総合研究所の研究活動、活動資金を提供する未来證券<メッセージ>

 ・思考
  思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから
  言葉に期をつけなさい、それはいつか行動になるから
  行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから
  習慣に気をつけなさい、それはいつか正確になるから
  正確に気をつけなさい、それはいつか運命になるから
  不詳


 ・笑うのに必要なのは17種類の筋肉、
  だけど、しかめ面をするにのには47の筋肉がいる。
  不詳


 ・退屈はお決まりの毎日から生まれる。
  悦び、驚嘆、歓喜は意外な出来事から生まれる。
  レオ・ブスカグリア


 ・私たちは自らめざす変化そのものにならなければならなければいけない。
  マハトマ・ガンジー


 ・与えられた試練は、あなたを周りの人とどうかしようとするこの世界で、
  自分らしく行き続けていくことだ。
  不詳