先週7月16日のHSP主催シンポジウムの懇親会にて、黒川清先生よりご紹介頂いた冨山和彦氏の著書を読破した。2年前位から、冨山氏には個人的に注目しており、講演会などはなるべく足を運んでいる。

冨山氏の生き方そのものに共感している。一歩でも近づけれるように、21世紀型のプロフェッショナルを目指したい。20代の若い方に、是非読んで頂き、逃げ切り世代の大人達に騙されないようにして頂きたいものである。


指一本の執念が勝負を決める

指一本の執念が勝負を決める


<読書メモ>


産業再生機構の実績
 ・41件の事業再生支援を終了し、前倒しで解散
 ・300億円以上納税し、最終利益から400億円程度を国庫に納付


○自身の経験から見えたこと
 ・もはや現代のビジネス環境では、20世紀型の「エリート」は求められて
  おらず、21世紀型の「プロフェッショナル」が求められている。
 ・自ら築き上げてきた適切な価値基準に基づき、全体最適を考えながら
  部分最適を判断し、意思決定して行動できる本当のリーダーが求められている。
 ・成果は自ら切り開かねば得られないのに、用意されたレールの上を必死に
  走るばかりで、大切な機会や成果を失っているエリートが多い。
 ・従来型エリートに共通することは、ストレス耐性に弱いこと。ガチンコ勝負に
  望むことが少なかったことが、根幹の原因である。
 ・プロフェッショナルは、リスクを取り、失敗を恐れずに、自らの価値基準と
  信念のもと、勝てるかどうか分からない試合に挑み続け、その結果、望まない
  結果に終わったとしても、ただでは終わらない強さと冷静さ、理性と感性を
  持っている。自分の無力、無能さも体で覚えているので、その結果は単なる
  「失敗」にはならない。


○カイシャ幕藩体制の崩壊
 ・国も地方も財政は破綻寸前。政府は約800兆円の長期債務を抱え、地方自治体の
  6割は赤字。公務員のリストラは有りうる状態。
 ・国税庁の調査では、17年度民間事業者の男性平均給与は538万円。従業員5千人
  以上の大企業では729万円、従業員10人未満の事業所では445万円と284万円の
  差があり、平均給与は大企業のサラリーマンが押し上げているだけ。
 ・少子高齢化は2つの社会的に深刻な影響を及ぼす。1つは経済力を維持できる
  だけの労働力が確保できなくなる。もう1つは人口減少で日本市場そのものが
  縮小し、瀬か定期名地位が低下する。さらに年金制度は崩壊する。
 ・カイシャ幕藩体制に入れるかは学歴で決まり、中に入ると年功で順番待ち。
  日本企業はゲマインシャフト(自然共同体)的なムラ社会なので、最も評価される
  スキルは内部調整能力。司令官になれる資質と敵と戦う資質とは違うはず。
  順調そうに見える集団では、どんなに優秀な人間であっても、ピーターの法則
  の通り、無能レベルに近づいていく。
 ・トーナメント戦のシェアは減少し、リーグ戦で勝敗を繰り返してきた人間が
  活躍するフィールドが広がっている。リーグ戦を勝ち抜いてきた奴の方が、
  負けを知っている分だけ実力がある。


産業再生機構の修羅場で見えたもの
 ・人が役に立つか経たないかの分かれ目は、その人にストレス耐性が有無。
  極限状態の時は、頭のよさより、ストレス耐性の有無の方が重要。
 ・ストレスが合わないと思う人は経営者になること自体をやめるべき。
 ・若い時に危機的状況に身をさらしてみて、自分がどういう人間なのか、
  確認する機会を持ったほうがよい。
 ・会社が倒れていくプロセスというのは非常に人間的な生々しいものであり、
  感情に流されないか、人間の強さ弱さの問題。
 ・ある業態とかビジネスモデルの王者になった人は、イノベーション
  ジレンマに、誰であっても必ずぶつかる。
 ・藤沢武夫氏の言葉(『よき経営者の姿』伊丹敬之)
  「3日くらい、寝不足続きに考えたとしても間違いない判断が出せるようで
   なければ、経営者とはいえない。平常のときには問題ないが、経営者の
   決断場の異常事態発生のとき、年齢からくる粘りのない体での"判断の
   間違い"が企業を破滅させた例を多く知っている。」
 ・世の中には、頭のいい奴は腐るほどいるが、追い詰められた状況下で、
  目の前の問題の何が重要で何が重要でないかを整理して、最終的に決断
  できるかどうかが大事。
 ・経営者の資質で重要なのは決断力。経営の場で直面する問題は、自分の
  出した答えを誰も担保してくれず、時間が経たないと正解かどうか分からない。
  しかし、自分が下した決断が間違っていれば、責任を問われる。
 ・ガバナンスの本当の仕事は経営者の首を切ること。ガバナンスをする側に
  いざと言う時に自分が社長と代わる覚悟を持っていないと迫力がない。


○戦闘力を身につけろ
 ・負け体験をするなら若いうち。30代半ばまでは若造なので、責任も問われない。
 ・30代半ばまでは、自分がした体験から何を養分として吸収したかの方が、
  見せかけの成果や数字よりも遥かに重要。
 ・入試で「自分の失敗のエッセイ」を書かせる米国ビジネススクールがあり、
  大した失敗の無い人間は魅力が無い、失敗が無いということは、勝負を
  していないということの証と捉えている。
 ・本当に悩んだ時に、ハウ・ツー本には答え書いていないので、古典を読め。
  『論語』『カリア戦記』『ローマ帝国衰亡史』『君主論』、聖書、シェー 
  クスピア、デカルト、カント、トルストイ、ドフトエスキー、松下幸之助
  内村鑑三など。
 ・自分の判断基準は、自分自身の価値基準に照らして「カッコいい」かどうか。
  

○戦闘力はこう使え
 ・優秀な司令官は、演じる立場とプロデュースする立場の2つを意識している。
 ・人間の在り方とは、最期に何を自分が喜びとするかに還元される。
 ・最期に勝つのは、いつまでも粘り強く、自分で考え抜いて正しいと判断
  したプロセスを踏み締め、成功に向けて飽くなき追求をし、その途中で
  出会う困難にも耐え抜き続けた人間である。
 ・辛い事があったとしても、そこから何かを学び取り、次に活かせば、
  やがて勝てると信じて頑張ってほしい。