不況になると格差が益々広がると言われるが、格差の現状が良く分かる内容だった。佐高信氏の「小泉・竹中構造改革が社会の約束事である信号機を壊した」というコメントが印象に残った。

このブックレットは、2007年12月15日に行われた「立教大学経済学部100周年記念シンポジウム」をもとに加筆・修正したものだそうだ。

信号機の壊れた「格差社会」 (岩波ブックレット)

信号機の壊れた「格差社会」 (岩波ブックレット)


<読書メモ>

○政治の仕事は正常な「信号機」
 ・経済が競争を是とし、競争をエネルギーとして発展していく限りは、経済においては必ず勝者・敗者、強者・弱者は生まれていまう。その時、その敗者・弱者の痛みを和らげ、その格差を狭めようとするのが政治の役目・
 ・資本主義の「憲法」というれるのは「独占禁止法」。この法律はスタートラインをできるだけ平等にするという法律。


○正社員への復活は困難
 ・日本経団連2006年アンケート
   フリーターを正社員として積極的に採用した企業は1.6%のみ。
   つまり、98%以上の企業で、フリーターの経験全く評価してくれない。
 ・製造業の派遣は、景気の調整弁で、派遣の人は人事部ではなく、工務部や調達部という部品を管理する部署がかなりしている場合が多い。



貧困ビジネス
 ・『貧困襲来』(湯浅誠、山吹書店、2007年)
  困っている人達から利益を貪る商売が横行している。
 ・敷金・礼金ゼロの物件の多くは賃貸者契約ではなく、施設管理契約で、家賃を1日滞納したらずくに入居者を追い出せる仕組みになっている。



○ワーキング・プア
 ・日本においてこの言葉が広く語られるようになったのは2006年から。
 ・2004年に米ジャーナリスト、ディヴィッド・K・シプラー氏『ワーキング・プア―アメリカの下層社会』(岩波書店)を出版。
  邦訳は2007年1月刊行。


○「世界の相対的貧困率」(『OECD日本経済白書〈2007〉 (OECD叢書)』)
 ・その国の中位の所得の半分未満の所得しかない人か゜、18歳から65歳の清算年齢人口において何%を占めるかという数字。

1位 アメリ 13.7%
2位 日本 13.5%


生活保護以下家庭
 ・日本の全就業者、特に雇用所得を得ている労働者では、
  年収150万円未満が25%程度、150万〜300万円未満が25%、合わせて年収300万円未満の労働者が、全労働者の5割に上る。
 ・年収300万円未満の就労者世帯は、18%にもなる。