本田健氏のセミナーで、朝倉慶氏のこの本が紹介されていたのを思い出し、遅ればせながら読んでみた。世界経済はやはり、もう終わっているような気がした。ここまでの事態を誘発した原因が、詳しく説明されており、我々が今、置かれている世界大恐慌への道が避けられない現状がよく理解できた。

個人の力では、もう何もできないが、現状を認識して覚悟を固められることがでただけでも、この本を読む価値があった。


大恐慌入門 何が起こっているか? これからどうなるか? どう対応すべきか?

大恐慌入門 何が起こっているか? これからどうなるか? どう対応すべきか?


<読書メモ>


○世界の金融崩壊
・この1年で世界中の時価総額は3000兆円減少し半減。世界のGDPの6割が無くなった。
・はっきりしている事は、金融機関が資金運用に失敗し、すでに預金者や投資家のお金が失われているということ。
デリバティブという「金融博打」に、投資銀行自己資本の30〜50倍まで勝負してしまった。
・商業銀行は自己資本比率8%という歯止めがあり、本来12.5倍までしか勝負ができないのに、SIV(特定目的会社)を使って、投資銀行と同じ勝負をしてしまった。
・彼らがやった「博打」の総計は、想定元本で6京円(1億円の1万倍が1兆円、その1万倍が1京円)。そのデリバティブ市場が崩れている。
・資本主義は既に崩壊しており、世界中の国が大量の紙幣を発行して、危機を乗り越えようとしているが手遅れである。
・政府関係者は、6京円の10分の1の通常の経済活動であるGDPの世界しか見えていない。
・サブフライムローン問題は公園の散歩のようなもので、CDS問題こそが本丸。


○世界の金融市場の現状
・目に見える世界→株式市場(3000兆円)、債権市場(5000億円)
・目に見えない世界→デリバティブ市場(想定元本6京円:内訳CDS5400兆円、住宅ローン損保証券700兆円、債務担保証券300兆円など)


○専門家のコメント
・前FRB議長のアラン・グリーンスパンは、「100年に一度の津波」。人々が七転八倒するのはこれからと警告。
デリバティブを開発したチャールズ・R・モリス(なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか―信用バブルという怪物)は、現在の状況を「春の散歩道」。これから大嵐がくるとほのめかしている。
ウォーレン・バフェットは「デリバティブ大量破壊兵器である」。
金融工学ノーベル賞を受賞し、LTCMで巨額な損失を出したマイロン・ショールズは、「大変なことが起きる」。とてつもない世界中の大波乱を確信。
・ジュージ・ソロスは「我々は、嵐から出ようとしているのではなく、嵐に向かっているのだ!」「サブプラスム問題とは別の超バブルが崩壊寸前にある」と早くから戦後最大の危機と警鐘をならしている。
・今回のノーベル経済学賞を受賞したポール・グルーグマンは「デリバティブ不思議の国のアリス」の世界。


金融危機を巨大な規模に拡大したCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場
CDS金融商品の元本を保証する保険のようなもの。
・その想定元本は、現在でも5400兆円と世界のGDPに匹敵。
相対取引なので流動性がなく、CDSの売り手(保険を引き受けた側)は、損害が出たら保障しなければならない。
・本来は銀行同士がリスクを分散させる為に始めた取引で、倒産確率をベースにデフォルト率によって適正水準で推移していた。
・2004年時点ではCDS市場規模は5兆ドルで、2001年のITバブル崩壊で4%近いデフォルト率だった。
ヘッジファンドの算入により、保険料が飛躍的に下がり、保険を買う金融機関にとってオイシイ商売となった。
・信用度の低いサブプライムローンでも、保険をかけてリスクを回避したとして、問題融資を拡大し信用パブルを拡大させていった。
・2007年には45兆ドルにまで拡大し、最終的にヘッジファンドCDS市場の6割を引き受けていた。
・ちなみにヘッジファンドの運用資産は1兆8000億ドル(170兆円)。
・世界最大の保険会社AIGは、07年12月期末のCDS契約の評価損を完全に見極めていないことを明らかにし大幅な損失を計上したが、2005年の段階で、CDS市場のビジネスは極めて危ないと判断して撤退している。
AIGの最大の取引先はゴールドマン・サックスで、CDS全体の引受額は50兆円といわれている。
・国会で金融庁は、日本国内の投資化が持つCDSは8100約ドルと回答。AIG保有額の倍近い額となっている。


FRBの現状
FRBのバランスシートは急激に膨張し、資産の劣化が酷い状態。
・リーマンが破綻した2008年9月中旬から1ヶ月後に資産が倍の2兆580億ドルになってしまった。
・長期国債は激しく売ることはできないので、資金が底をついたFRBは、財務省に発行してもらった短期国債の資金を預金してもらい、資金繰りをつけている状態。
・いずれはFRBの資産の酷さが明らかとなり、一気に米国債暴落→ドル暴落→世界の貨幣への信頼の崩壊へと襲い掛かってくる。


金融危機から国家破綻の危機へ
・2008年10月アイスランドが破綻後、アルゼンチン、パキスタンベラルーシと次々と国家が財政危機に陥った。
・スイスも銀行の総資産が国のGDPの7倍もあり、深刻な状況になるのは時間の問題。
・スイスのUBSの総資産は、スイス全体のGDPの4倍まで膨らんでいる。


○実態経済の雪雪崩のような下落
・石油価格は、WTIが2008年7月11日の147ドルから11月中旬には50ドル割れと、4ヶ月で3分の1に下落。
・海運のばら積み船運賃の国際指標「バルチック海運指数(1985年平均1000)は、2008年5月20日の11792から12月上旬には663ポイントへと半年で、94%へと記録的な暴落。
・鉄スクラップの国内価格は、2008年7月には1トン7万円から、11月には1万円割れへ暴落。
・ニッケルも2007年から比べると80%近く暴落している。
・2008年10月現在で、最高価格から下落率を見ると、アルミニウム37%、銅47.2%、すず51.7%、鉛63.5%、亜鉛73.7%。
・ロシア株は5ヶ月で75%の下げ。


○米住宅バブル崩壊
フレディマックファニーメイ点は、530兆円の住宅ローン債券、170兆運の社債を発行しているが、全て自分で保証していること。
ファニーメイは、このレバレッジが150倍となっている。
・米住宅価格は73年間上がり続け、2002年からは年率10%しいう効率で上昇し、2007年に住宅バブルは弾けた。
・これからクレジットバブルの破綻から「逆資産効果」が始まる。


GMの凋落
・米国市場で株価10ドル割れは倒産危険水域であるが、GMの株価は1ドル70セントとなってしまった。
GMは、6兆円の債務超過となっており、毎月10億ドルずつ現金を失っている。
GMは年間売上20兆円、26万人の従業員、関連会社を加えれば70万人、さらに年金受給のOBを含めると120万人がGMで生計を立てている。
GM雅現在発行している社債の残高は280億ドルと、世界最大。