大学フリークの一員として、大学経営に関する情報は興味深く、定点観測している。大学全入時代と言われ、いよいよ大学の淘汰が始まっているようだ。最新の情報が学部毎に整理されていて理解しやすかった。


消える大学 生き残る大学 (朝日新書)

消える大学 生き残る大学 (朝日新書)


・2010年度の学校基本調査によると、日本には国立大学86校、公立大学95校、私立大学597校、合計778大学がある。(ただし公立大学は統合化で80校になっている)
・私立大学の4割が定員割れ。
・2010年度には、5つの私立大学が募集を停止。


○競争原理にさらされる国立大学
独立行政法人には国から運営交付金が支払われ、国立大学法人にも年度毎に各大学に算定基準に基づいて支払われる。
・運営交付金は、年度にしばられない渡し切りで、使い途も限定されない使い勝手の良い資金。
・この国立大学法人運営費交付金が、2005年度から2009年度にかけて毎年1%削減が続けられ、2004年と比べ合計830億円が削減された。予算規模40億円程度の小規模な国立大学が約20校消滅した計算になる。
国立大学法人全体で見ると、法人化の2004年度からの6年間で常勤人権費は330億円減少し、非常勤人権費198億円増加した。
・法人化して6年間で、国立大学付属病院運営交付金は2004年度の584億円から2009年度の207億円へと1/3近く減少。


東京大学ひとり勝ち
・比較的自由に使える寄付金、競争的資金の間接経費、財務収益の総額の全ての項目で、東京大学がトップの293億円。2位の京都大学205億円の約1.4倍。10位の筑波大学29億円の約10倍。
・国からの運営交付金東京大学がダントツで2010年度は857億円。2位の京都大学が580億円なので1.5倍。国立大学法人86校で1兆675億円のうち8%を占めている。


○生き残りをかける私立大学
・私立大学は、学部生数で全大学生の77%を占める。
・大学設置基準等の改正により、2011年4月から大学、短大、大学院、高等専門学校の情報公開が義務付けられた。


早稲田大学の実情
リーガロイヤルホテル東京は、土地新宅方式となっており建物は2024年に早稲田大学に引き渡される。
・大阪の私立摂陵高校は2009年入試で、入学定員245人に対して、志願者35人、合格者28人、入学者11人という悲惨な結果。
・創立125周年記念事業の寄付金250億円集めは難航し、1年遅れでやっと達成。
早稲田大学長年の悲願である医学部新設について、医学部新設には700〜900億円かかると言われ、医学生1人の6年間の養成コストは約1億円、私立大゛各医学部の支出の7割が人件費という点から、ハードルは高い。


明治大学、志願者数トップの原動力
・2010年、明治大学の志願者数が11万5700人と11年連続でトップであった早稲田大学を185人抜いて最多となった。2011年もトップの座をキープ。
・志願者数とは、受験者数ではなく、複数の学部を受験する学内併願率が高ければ、志願者数は増加する。受験チャンスを増やす試験制度が「全学部統一日程入試」となる。


○淘汰時代が始まった法科大学院
・2004年に法科大学院がスタートし、2005年に新司法試験が始まった。
法務省は当初の司法試験合格者3000人構想から後退し、2000人前後となっている。
・2010年の法科大学院の総定員数は4900人強であり、前年より880人減となったが、2000人前後の合格者数が定着すると40%とか合格できない。当初は法科大学院修了4000人に対し3000人の合格で75%の合格率とされていた。
・大学院終了後、5年かで3回しか受験かゆるされず、その後は受験資格がなくなる規定があり、司法試験浪人が累積増加している。