昨日12/4に首都圏バイオ・ゲノムベンチヤーネットワーク主催の第1回プレベンチャーセミナーが開催され、日経BP社医療局バイオセンター長、宮田満氏の基調講演を聞いてきた。

バイオベンチャーの創業を目指す若手の起業家が集まるのかと思っていたが、投資家サイドの参加も多く、全体的に参加者の年齢が高いのには意外だった。<宮田氏の講演メモ>

○米国のバイオ業界
ジェネンテック社が、2005年に売上でロッシュの53%の規模になった。
・米国ではバイオセクターの時価総額が、ITセクターの時価総額を超えている。
・ジェネッテックより時価総額が大きいIT企業は、IBMとグーグルのみ。2社より上位は全て製薬メーカー。
・バイオ企業は4500社。600億ドルの収入があり、時価総額は5000億ドル。20万人を雇用。
 180億ドルの研究開発費を投じており、知識資本主義の業界である。
・2008年にはバイオ業界は、黒字転換するが、これまでに30年間かかっている。
 →日本がバイオ産業に投資を開始したのは1985年くらいから。
・知識資本主義の産業は、コミュニケーション・ロスの無い会社が強い為、ベンチャー企業に優位性が出てくる。

○バイオテクノロジーのトレンド
・1970年代にサントリーが遺伝子操作の為だけに30億円投資したが、同じ事が現在では10〜20万円でできるようになり、技術の陳腐化が進んだ。
・2003年4月1日にヒトゲノム解読が終了し、創薬戦略が激変した。
 →それまでは、動物の薬を作って、人間に当てはめて臨床試験をしていた為、開発期間も膨大にかかり、2万分の1の確率でしか製品にできなかった。
 →現在は、最初から人間の病態から探り、人間のデータを使用して開発する為、3〜4年開発期間が短くなる。しかし、抗体医薬は膨大な開発費が必要。
創薬のトレンドは、低分子医薬から抗体医薬に移っており、抗体医薬の臨床試験成功率は30%と、成功率が低分子に比較して遥かに高い。
 →日本の製薬メーカーのパイプラインは、未だに古い技術の産物である低分子医薬に依存している。

○日本国内のバイオ業界の動向
・日本国内のバイオベンチャーはこれまでに15社がIPOしているが、最初に2000年12月19日にマザーズに公開したインテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティックス社は、2006年に上場廃止となった。
・現時点で、アールテック・ウエノが2製品を上市させ、武田薬品にライセンスしている。
 →成果を出しているのはウエノだけだが、ウエノの社長も上野製薬の御曹司であり、叩き上げで成功しているバイオベンチャーは無い。
・国内大手の製薬メーカーの合併により、約2000人の雇用が減り、バイオベンチャーに人材を放出し始めている。
・大学発バイオベンチャーは400社程度あるが、全て行き詰っており、続々ベンチャー・キャピタルが同じ企業同士を合併させられており、失敗が表面化していないだけ。

○日本バイオ業界の課題
・日本は製造業資本主義であり、「前へ習え」という文化
 →経口避妊薬を認めていないのは、日本と北朝鮮のみ
イノベーションを受け入れるシステムが無い
 →個人で責任を取る人がいない、個人で投資をする人がいない

今回のセミナーの副題「バイオベンチャーの志士たちへ」に対し、宮田氏が「幕末の志士も、最初に動乱に飛び込んだ者は、戦場で討ち死にし、次に飛び込んだ西郷達も命を取られ、最後に行った第三世代が明治政府を作った。バイオベンチャーも今までのベンチャーを屍にして、新たなベンチャーが登場する必要がある。当面は流れ弾をとにかく避けて、必死に生き延びるしかない」というコメントが、なかなか興味深かった。