学生時代は相当読んだ佐高信氏の著書を久々に読んだ。社会を批判的視点で見る事と騙される側にも責任がある事を忘れていたと反省。

本書は『ザ・ベストマガジン』の2004年10月号〜06年5月号の連載をまとめ、加筆したもの。

<読書メモ>

自民党の思想信条の2つの流れ
 1.国権派・反リベラル派:反共産主義思想のイデオロギーこだわり派。親台湾。
  反田中・反中国グループが青嵐会石原慎太郎浜田幸一中川一郎、渡辺美智男、森善朗、山崎拓らを包み込むように福田派があった。福田の書生をしていたのが小泉純一郎
  タカ派の福田派を継いだのが安倍晋太郎、森善朗。
  福田赳夫の親分は反共の岸信介
 2.民権派:反・反共思想。松村謙三石橋湛山。日中国交回復を実現させた田中角栄
  民権派の流れでは、田中真紀子宮沢喜一河野洋平加藤紘一らの日中友好派。

○外務省の内部構造
 ・アメリカを軸にした欧米派:圧倒的に主流、米大使を経験後、事務次官への出世コース。
 ・ロシア派のロシアスクール:鈴木宗男(平和を愛するダーティーハト派)をバックに力をつけた
 ・中国派のチャイナスクール:田中真紀子をバックに力をつけた

個人情報保護法は権力者保護法
・通称メディア規正法:権力者の疑惑隠しが法案の真の目的
 →疑惑の対象者に対して、得た情報の利用目的を明確に提示し、同意を得なくてはならない
  告発した情報提供者は、取材対象者の個人情報を第三者に提供したとして罰せられる可能性有
  匿名取材ができなくなり、スキャンダルを追求することが不可能となる
・同法の罰則の対象は雑誌に限られているので、新聞・マスコミは取り上げない
 →『噂の眞相』が休刊となったのも同法案の影響
・2004年2月、「立川テント村事件」:立川自衛隊監視テント村のメンバーが自衛隊官舎のポストに反戦ビラを投げ込みしたら、住居侵入に当るとして警察に逮捕された。

○歴史の無知を知る
・9.18: 1931年9月18日の盧溝橋事件をきっかけに日本の中国侵略が始まった
 九・一八記念館には、どうしても許せない2人の日本人の写真が飾っている。
 →満州事変を計画、実行した関東軍参謀、板垣征四郎石原莞爾

○利益を優先する体質
国鉄民営化には、国鉄内に存在する組合を潰すという政治的意図が絡んでいた
 →最も有力な国鉄労働組合は、当時、社会党の地盤で、中曽根康弘首相が切り崩した
日本航空の会長職は名誉ある地位であり、時の政府の思惑から巧みに利用されてきた
 →「財界の政治部長」と言われた経団連事務総長の花村仁八郎は中曽根に認められてJALの会長になった

○騙されることにも責任がある
・小泉-竹中がやったことは、外資に食い物にされただけ
 日本長期信用銀行(現・新生銀行)の不良債権処理に4兆円の税金を投入し、10億円でリップルウッドに売却

○怠ける権利
・ドイツ哲学者のカール・マルクスが労働する権利を唱え、働く喜びや平等に正当な労働報酬の権利を説いた。
・それに対して、マルクスの娘婿のポール・ラファルグは『怠ける権利』という本を書き、「働くこと自体は目的ではなく、自分達には怠ける権利がある」と。働く事は良い事というから、勤勉は美徳という幻想を抱かされ資本家にすくい取られる。
 →ニート達は、働く事に疑問を持たない価値観しかない親達の生き方を、憧れではなく反面教師として生きてきた

戦後60年は対米政策の歴史
吉田茂:戦中は戦争に協力せずに憲兵に逮捕されたハト派政治家。新憲法の「軍備無し」を最大限に利用して経済を発展させた。1950年の朝鮮戦争の時に、米国から再軍備を迫られたが、自分への反対派・野党勢力を口実に巧みにかわした。
岸信介:戦中は商工省の幹部として満州国の経営に携わる。戦後はA級戦犯容疑者として巣鴨プリンスに収監。反共、憲法改憲派。岸の時代に自衛隊が増強され、1960年に日米安全保障条約の改定を行う。
田中角栄:吉田の路線。軽武装、経済重視。イデオロギーを越えて経済重視で中国と国交回復を図った。


『小泉よ 日本を潰す気か!』 佐高信著 KKベストセラーズ 2006年5月5日初版第1刷発行 1300円