『ファンド・オブ・ファンズ入門』の読書メモ

さわかみ投信の澤上代表の講演で、「おらが町の投信」について触れられ、地方発ファンドの仕組みに大変興味を持った。ファンド・オブ・ファンズの仕組みがよく理解でき、「資産形成のための道具」としてぴったりの運用商品である事がわかる本である。

<読書メモ>

○個人資産の運用状況(日銀速報2005年6月末)
・個人資産1400兆円の内、投信に向かっている資金は40兆円。2.8%に留まっている。
・預貯金は732兆円で、51%となる。現金とタンス預金を合わせると54%を超える。
・生命保険は予定利率が6.25%から1%に引き下げられても233兆円。
→預貯金と生命保険に収まっている1000兆円の内、将来は欧米と同様10%程度(100兆円)が長期的な運用を求めて、投資信託に向かうだろう。


○投信の仕組み
・顧客資金は信託銀行の口座に「分別管理」されており、投信会社、信託銀行が潰れても資金に影響なく、ペイオフに関係ない。
・運用はプロが担当する。
・いつでも購入、解約が可能で小口の投資が簡単にできる。

○ファンド・オブ・ファンズの定義
・ファンドに投資するファンド
・外部の能力を活用し、投資家の立場に立って、低コストで優れた運用を目指す試み

○信託報酬1%の違いによる差
リターン8%

- 信託報酬1% 信託報酬2% 差額
開始 100万円 100万円 -
10年後 183万円 168万円 15万円
20年後 361万円 302万円 59万円
30年後 711万円 541万円 170万円
40年後 1,399万円 970万円 429万円


○個人資産の分布 (野村総研『知的資産創造』2004年8月号)

純金融資産 世帯数 階層別資産規模
5億円以上 6万世帯 38兆円
1億円〜5億円 72万世帯 125兆円
5千万円〜1億円 246万世帯 160兆円
3千万円〜5千万円 614万世帯 215兆円
3千万円以下 3,882万世帯 519兆円


○良いファンドの条件
ファイナンシャルプランナー伊藤宏一氏の条件 (『インベストライフ』誌2005年3月号)
 1.手数料が安い
 2.運用期間を限定していない
 3.累積投資ができる
 4.純資産高が安定的に増えている
 5.「長期投資」を基本的な運用スタンスに据えている
 6.投信評価会社の評価が高い
 7.納得できる起業の株式に投資している

・著者の村山氏の条件
 1.運用方針、運用哲学が明瞭で一貫性がある
 2.運用方針に照らし合せて、良い運用成績を残している
 3.その投信に継続して投資してくれる「サポーター」がたくさんついている


郵貯の投信ビジネス
・郵便局は郵便貯金210兆円、簡保資金110兆円、職員数27万人
・現在、郵貯が進めている投信の窓口販売ビジネスは、いくつかの選別した投信を個別販売し、販売手数料を稼ぐ方法をとっている。
 →この方法だと、各ファンドが1兆〜3長ほどの個人マネーを集めたとしても、70〜200本のファンドを扱わないと、200兆円の郵貯資金を吸収できない。(管理コストが増大する)
・ノーロード型のファンド・オブ・ファンズにして、信託報酬を原資とする販売代行手数料を収入にする方法をとるべき。40兆〜70兆円の資産残高のファンドを3〜5本を窓口で扱うようにする。


○全国各地での長期運用熱の高まり
沖縄県民130万人で、5兆円の預貯金を持っているが、銀行・郵貯経由で東京へ吸い上げられてしまう。
・鹿児島県民162万人で、6兆4千億円の預貯金を持っているが、地元経済の地盤沈下は止まらず、預貯金の殆どが東京へ向かっている。
→全国各地でゼロ金利にシビレを切らし、長期運用に対する関心が高まっている。


○「おらが町の投信」の提案
・地元の人間が金融庁から投信ビジネスの認可を取得し、公募ファンドを設定する。
 →現在、国や当局で検討されている投資サービス法が制定されると参入はもっと楽になる。
・投信の事務金利業務、基準価額の計算は、全部アウトソーシングできる仕組みがある。
・投信を直販するシステム全版も、出来合いのものを導入する。
・ファンド・オブ・ファンズの形態にして、本格的な長期運用ファンドをいくつか組み入れる。
・最初は小さなスタートでも、低コストでよい成績を積み上げていれば、爆発的に大きくなるはず。