新春特別企画(テーマ「経営の魂」)ということで、大変豪華なパネリストであった。増田社長の最後のメッセージ「夢しか実現しない。自分が成りたいようにしかなれない」という言葉が印象に残った。

ディレクTVの失敗談は、本当に勉強になった。天王洲アイルまで出かけていった甲斐があった、素晴らしい企画だった。


パネリスト

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社  代表取締役社長  増田宗昭
株式会社キタムラ  代表取締役会長兼CEO  北村正志氏
ブックオフコーポレーション株式会社  代表取締役会長兼CEO  坂本孝氏
株式会社吉野家ディー・アンド・シー  代表取締役社長  安部修仁氏
株式会社良品計画  代表取締役社長  松井忠三


<パネルディスカッションのメモ>

○各社長の近況
・増田社長:運動メインで減量(85kg→70kg)に成功。TSUTAYA会員1,973万人、1200店、Tポイントカード会員400万人
・北村会長:デジカメの登場でフィルムが無くなった。シュリンクする市場で占有率とブランドを上げるかに挑戦する為、写真屋が売りにでたら引き取っている。
・坂本会長:創業16年、昨年2006年11月にポーター賞を受賞。人を育てて人材が競争優位性とし参入障壁にする。
・安部社長:昨年12月に3日間の役員合宿を開催し、理念・価値・約束・ビジョン等の定義づけを統一した。
・松井社長:残業禁止(19時までの勤務)で最近注目されている。


○創業魂
・増田社長:
  成功している創業者は、いい時も悪い時も言うことが変わらない。ある意味ワンパターン。
  人が集り、経験や金勘定てはない人間力がある。
  経営資源は「人」に尽きる。創業の動機として何故その事業をやるのか?をしっかり考えるべき。
  情報は社長に集るので、役員ではなく社長になるべき。
  TSUTAYAの1号店が儲かった時、大企業の進出が心配だった。
  何かやるならば世界一になる事しかやらない。その為にはセグメンテーションが大事。
  商売の要素は、①顧客、②商品、③競合だが、①と②の比重が大きい。
  自分の力で1番になれる商品と商圏を選び、勝ち続けることが必要。
  1番になったら、利益が出るので、アイテムを広げていく。
・坂本会長:
  中古ピアノで成功し、中古ビジネスの中で、たまたま本をメインにすることになった。
  創業当時は、古本屋では銀行からの融資を断られ、不動産屋からも店舗契約を断られた。
  古本ビジネスで働く人達が仕事を誇りに思え、世の中に必要なビジネスとして認められるようにする為、価格を透明にし、IPOをして世界に進出した。
  古本業界でシェア60%を取れたので、今後10年は確実に成長を続けられるようになった


○人づくり魂
・北村会長:
  事業は、いかに人と資金を集めるかが大事。人が集まらない企業は夢が続かず、事業が継続できない
  社員が辞めないように、労働環境を人並み以上にする
  社長自身がスジを通して、公私混同をしてはならない
  業務を分割して、各々の努力が全員に見えるようにしてあげる
・坂本会長:
  ブックオフの人づくりのコンセプトは、「他の業界でも通用する店長に育てる」
  店長の評価基準は、優秀な店長を何人育てたか?人の育成能力を評価する。
  毎年新卒を80名採用しているが、成績証明不用・筆記試験無しで、バカ集団を集めている
   →過去に新卒社員全員にSPI試験を受けさせ、その後の経過を調査した結果、成績が低い順番から優秀な店長になっている事が判明した。
  最終面接試験(既に全員採用が決定)は社長が行うが、この時に一番嬉しかった印象を各社員に植え付けている
  創業当時、毎日アルバイトに夢を語り、働いてくれている人を好きになったら、必ず会社の戦力になってくれる


ベンチャー
・増田社長:
  会社は成長しないと面白くない。同窓会で友人と比べて自分が成長しているのが分かると嬉しい
  物事はできないことをやる。それをやりたいからやる。その中には「できない」という概念は最初から無い
  →「自分は経験がないからできない」と社員がよく言うが、「お前は親父になれるようになってから、子供を生むのか!」といつも叱り付けている。
  何事もやっているプロセスでできるようになる。
  失敗するヤツほど、力をつけていく
  経営の本質は、「失敗の許容」。逆に許容できない失敗はしてはダメ。
  普通は新規事業は全て失敗するから、失敗を計算して始めねばならない。
  →人脈も経験も何も無い衛星放送事業なとやってはダメ(笑)
   ディレクTVの必要資金は600億円と見積り、米ヒューズ社200億円、みずほ銀行200億円、自分は200億円しか出さなかったが、結局、個人で100億円借金が残った。
   当時のTSUTAYAは年商100億円で、利益40億円。(100億円の借金は5年分の利益)
   余談だが、当時社員600人に対し、ディレクTVの効果で5万人の新卒応募があり、新卒300人を採用。
   会社は1/3がド素人となり、オペレーション不能になった(笑)
   ちなみに、この時、後のサイバーエイジェントの藤田社長を面接で不採用にしてしまっていた。(笑)
  借金はなかなか返済できない
  →100億円の借金を抱えてしまい、ショックで目から見える景色が平面にしか見えず、臭覚が無くなった。
   TSUTAYA楽天IPOできたので、借金を全額返済できた。


○組織魂
・北村会長:
  1998年に出店計画を立て、550店舗の内350店舗を1999年〜2001年にかけてカメラ店を出店した所、2002年にデジカメが登場し、カメラ市場は1/100、フィルム市場は1/4に市場がシュリンクしてしまった。
  それまでカメラ屋では日本一だった。今でも350億円の利益の内、DPEは220億円。
  もうダメだと思い目の前が真っ暗になったが、人間、やってみないと先の事は分からない
  深刻に考えすぎる必要はなく、なんとかやっていけている(笑)
  我々のような危機的な状況の組織の意思決定には、中間はなく、一か八かしかない。
  デジタル1本に掛けることに決め、ミッションを「ピクチャリング」とした。
  →思い出と人との絆を保管するビジネスと定義づけ、デジタルセンターラボを中核とした1000店舗の企業グループを目指すことにした。
   その結果、写真屋が売りに出たら、全て買収している。麻雀で言えば「チンイツツモ」以外では挙がらない。(笑)
  余談だが、デジカメはキタムラが絶対に一番安い(粗利4%のみ)。逆ザヤで販売し、客集めの手段と位置づけている。
・安部社長:
  組織が無くなる時は内部から腐り、壊れていく
  2年半の間、「内部が壊れない、折れない」をテーマにし、結束を強めることに注力した
  会社の歴史と伝統は、受身で縛られるならば捨てるべきだが、建設的にマインドにすれば誇りになる
  目標が1つになっている限りは、組織は維持できる
  →その為には成果や結果が、ある態度、出て来ないといけない
  掛替えの無い事業体を目指し、無くなっても誰も気付かないような事業はやる意味が無い
  仲間の配分を少しでも多くする為に、利益を出さねば成らない


○起業を目指す若者へのメッセージ
・松井社長:新規事業は必ず失敗するのだから、気軽にやることにしている。
・安部社長:セグメントと1番になれ、掛替えの無い仕事をやってほしい。
      1つの事を突き詰めて、ベストウェイを求め、人間技ではできないと思われるオペレーションを実現する
・坂本会長:初期段階で、師匠を持つべき。苦労して自分でルールを作った先輩に隠さず信頼して後を追いかけて成長してほしい。
・北村会長:どうせやるなら、明るくのびのびとやっていきたい。
・増田社長:人間の最も優れている能力は「イメージする力」。考える事ができるのに、考えていない。
      努力することもできる。
      事業を始める前提は、「自分は何がしたいのか?」である。
      結局は、夢しか実現しない。自分が成りたいようにしか成れない