証券業協会が「証券知識普及プロジェクト」と銘打って、毎年各地で投資セミナーを開催しているが、今春は堺屋太一氏と大前研一氏というスゴイ講演者であった。

二方とも話にオリジナリティがあり大変興味深かった。


堺屋太一氏 講演メモ>

○最近の動き
投資信託が100兆円を超え、年金資金の18%が株式で運用されている。いずれは30%程度となるであろう。
ODAが一時は1兆2千億円あったが、7千億円まで縮小されている。

○日本は大きな転換期
・今後3年間でこれまでの戦後60年の常識が大きく変わる。
いざなぎ景気を越え、60ヶ月続く刑期回復を迎えている
・地方には金持ちがいなくなった。土地持ちは戦後の農地解放で、山林はバブル後タダに、老舗企業は中国に負け、伝統的商店はシャッター通りへ、建設業は倒産。
 地方で金持ちは医者だけになってしまった。
・先進国の中で、この25年間で首都への一極集中化が進んだのは日本のみ。


○近代工業化時代の国のコンセプト「物を多く作るれば、幸せになれる」
・規格大量生産に相応しい戦後型三角形ピラミッド
  ①官僚主導の業界協調体制により、過剰な競争を抑えた
  ②日本式経営(終身雇用、年功賃金)
  ③企業忠誠主義(職縁社会)により核家族
・官僚は必ず間違える仕組みになっている
  →全ての行政機関が縦割りで、他の条件が変わらないという前提で予測するため


○知価革命の始まり
・物が多い事(客観的)が幸せな社会から、満足が大きい方(主観的)が幸せな社会に変わった


○好老社会の到来
団塊世代をうまく使える会社が成功する
  ①市場価格で雇える労働力(年金併用型労働者)が800万人出てくる。
   →タクシードライバー 30年前の平均年齢は32.5歳、97年に自由化となり平均年齢は56歳となった。
  ②マーケットの高齢化
   →開業医の平均年齢が60歳を超え、月間227万円の平均売上がある
・70歳まで働ける社会にするべき
   →もし70歳まで労働人口に加えられると、日本は世界一労働人口比率が高くなる



大前研一氏 講演メモ>

○世界の運用における常識
・ここ5〜6年はヘッジファンドの利回りは年15%。通常は年25%。
・昨年は米S&Pインデックスが年12%、上海は40%、日経225も40%、ペルーも良かった
・一昨年まで、エジプトは7年間で700%
・世界の先進国で過剰流動性が高まり、お金が余りまくっている。
・投資手法としては、巨大ファンドにインデックスでフォローしていき、同じタイミングで買うべき


○日本の現状
・日本は金利が0.25%と殆どタダでも借りる日本人がいない
・安い円を買って、金利の高いドルで15%運用して1%の金利を返す「円キャリー」の影響で円安になっている
金利を高くできるのは経済が強い国しかできない
・1500兆円の個人資産が0.125%の定期金利で、日本政府にカモられている
・90年不況の際に、ステップアップ住宅ローンという不況対策に騙されて、通勤時間1.5時間の場所に6千万円でマンションを購入。時価2800万円にも係わずローンの元本部分の返済はこれから。
 現在は通勤時間40分の場視に3800万円で、同じ広さのマンションが購入できる。


○米国の投資家
レーガン大統領が、401Kを導入し少人数の勉強会が各地で開かれ、国民が一生懸命勉強し年10%の利回りを取れるようになった。
・大学もファンドで利益を出している
  ハーバード大学は3兆円を年15%で回して、1年で4500億円増やしている
   →両親の収入が5万ドル以下の生徒だけ授業料がタダ
  エール大学は1兆円のファンドを運用。東大の基金は1600億円
・1兆円規模のファンドでないと年平均15%で回せない


○日本で今後起こること
・2025年には平均年齢が60歳となり、それまでに必ず世代間闘争が起こる
・現在の経済競争力を保つには、年間39万人の移民を受け入れねばならない
・日本国民は文句を言わないように育てられ、頭の良い誰かがチャント考えてくれていると皆が思っている


○老後に必要な備え
・日本人は老後の備えについて、重複が多すぎる
  →生保、年金、住宅ローン終了、預金
・イタリア人は丁度死ぬ時に貯金を使い切る
アメリカ人の資産ピークは48歳
・年金の30%を貯金して、日本人は死ぬ時が資産のピーク。
・日本の生活保護がもらえる金額は月14〜16万円であり、ワーキングプアより収入が多い
・30代の70%が老後が心配、70歳の60%が老後が心配←お前はもう老後だよ!!
・60歳まで生きた人の残存年数は25年
シンガポールは10兆円の国民年金を年8%で回しており、中国に投資して300万人の国民を食べさせている
・世界の人がどういう運用をしているか、良い人生を送る為に勉強する
・やりたいことは全部やる、早めに人生を楽しむ