日経新聞主催の「経営者未来塾」で伊藤元重先生が講演されるということで、大手町まで出かけてきた。現在、日本がどのような経済的におかれていて、今後どのような課題を抱え、どうしなければならないか、大変貴重な示唆を与えて頂けた講演であった。
尚、本公演の概要は3月中旬に日経新聞朝刊に掲載されるそうである。
総合研究開発機構(NIRA)・伊藤理事長対談シリーズ
<講演メモ>
○大きな変化をしたという時代認識の理解が必要
・同じ事をやっていても違う角度から見ると違うものになる(ハーバード大学での教育)
・格差問題でジニ係数がよく話に挙がるが、ジニ係数ほど充てにならない指標はない。
→社会はそれど簡単ではない。
・過去の一時的に恵まれた高度成長社会に対し、日本経済の環境は大きく変わったという認識が必要
→成熟・人口減少・グローバル社会において、今後どうやって活力を取り戻すかを考えねばならない
○日本が現在おかれた状況
・金融政策:世界で最も低い政策金利(0.25%→0.5%へ)
→かつて無いほどアクセルを踏んでいる状態
・財政政策:毎年30兆円の赤字。税金収入より支出が30兆円多い。
→GDP500長円の約6%をネットでアクセルを吹かし続けている状態
・為替:実質実行レート(あらゆる通貨と円との平均レートで、物価も加味されている)で1985年1月($1=240〜250円)の水準
→輸出産業には良い環境で、アクセルを踏んでいる状態
⇒3つのアクセルを踏み込んでいても、2%の経済成長しかないのが現実
⇒需要ファクターが牽引しているのみ
○どうすれば良いか
①需要喚起策の3つのアクセルをゆっくりと緩めていく(消費税UP)
②供給サイドの逆のアクセルを踏み込んでいく
→サプライサイドをいかに活性化できるかが鍵となる
○サプライサイド(供給側)を増やす方法
①国内資源(人、金、不動産)をフルに活用する
→東京の1.7倍の面積の休耕農地(農家の平均年齢65歳)、東京駅前の郵便局本局、全国35万人の郵便局職員
②経済資源を増やす(インビジブル・アセットへ投資する)
→人の教育訓練へ投資し、個人個人の能力を高める
③外国を活用し、日本で何をやるか考える
→柳井会長「ニユクロは儲からない業務を中国でしている」1980円のフリースの仕入価格380円
→これは製造業しかできない。製造業はGDPの20%(20年前は30%)に過ぎない
→残りの80%の内、公共セクター、医療、教育、農業の各セクターをいかに効率化するかが課題
→やる気のある強い人達に渡さなければならない
→やる事はいっぱいあるが、1つ1つにパワフルさが必要
・公共セクター:道州制をどう使うかが鍵となる
・医療:人的資源として最も偏差値の高い人材が働いているが、仕組みがマズイので、最もうまく動いていない。
今ある全ての医療関連資源を、リシャッフル(再配分)する仕事が必要とされる。
それがコンタルサントか、事業再生企業か、株式会社による運営かは分からないが、外資系コンサル会社が抜け目無く、都内の不動産買い漁ったようにビジネスとして狙ってくる。
・1%の経済成長が30年続いても経済規模は1.35倍にしかならないが、3%の経済成長が30年続くと2.45倍となる。
→3%の経済成長を続けられるようにしなければならない
○構造改革、自由化すれば新しい産業が生まれる
・不動産市場:バブル崩壊後、証券化による不動産流動化が進み活性化
・IT産業:NTTが管理するネットワークを開放したことで、世界一のブロードバンド普及率となった
○消費税はいつ上げるべきか?
・国民は消費税を上げてほしくないと思っている
・景気回復により法人税が5兆円増えた(消費税2%分に相当)
→消費税1%で2兆5千億円の増税効果がある
・消費税とは付加価値税であり、国内の全ての付加価値を足した物=GDP500兆円
→消費税1%が2兆5千億円というのはなぜかというと、消費税を免除されている中小企業があるから
・財政は大変な状態である
①750兆円の借金→本当に問題であれば、とっくに日本国債は暴落しているはず
②本格的に高齢化社会なり、社会保障費が増加する→現在の制度を維持すれば深刻な問題となる
→現在は60〜70歳の人口は少なく、昭和20〜30年生まれが多くなっており、年金・医療が本当に大変になるのは5年後
・一方、フランスの消費税は19%であり、日本も19%とすると37兆5千億円の税収が見込める