著者は麻生太郎・外務大臣の実弟である麻生泰氏である。ちなみに日本医師会会長を25年務めた武見太郎氏は著者の岳父とのこと。企業立病院である麻生飯塚病院の歴史と強い病院経営への様々な取り組みが紹介されている。
医療の質の向上や病院の管理・経営の発展等を図るために、自主的な活動を全国的に展開することを目的としたVHJ機構の活動に興味を持った。
- 作者: 麻生泰
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
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<読書メモ>
○ある事実
・規制に守られ改革が進まず、競争力が向上しない産業分野の代表格として、
公的機関と民間が共存している医療・病院事業がある。
・大学医学部は、国公立大学51、私立大学医学部29。
・300床以上の中規模病院では、公的病院が710、民間病院が351。大型病院の
70%以上が赤字。
→公的病院には赤字補填を目的とした補助金が、毎年1兆円以上投入されて
いる。
○麻生飯塚病院の歴史
・1911(明治44)年に著者の曾祖父である麻生太吉が麻生グループの社会事業
として開設したが、地元医師会の反対で、1918年に麻生炭坑病院として、
従業員と家族約3万人を対象に開院。
・70年代の病院改革により、20年間黒字経営、売上高を3倍近く増やし、
年商220億円。医師数220名。
○病院経営とはどのようなビジネスか
・病院経営をサービス業と考えると公的病院では構造的な限界がある。
・病院の経営の核を握る医師は、組織を効率よく運営することや、人材育成の
金利手法などの教育は一切受けていない。
・リーダー次第で経営が改善させる。実績の素晴らしいリーダー
熊本済生会病院の須古院長、国立九州医療センターの朔院長、熊本赤十字
病院の東院長、慶應義塾大学病院の相川院長
・病院経営者にとって不可欠の要素
①患者の満足度を高める。従業員の満足度の向上に努める。それを可能と
する経営改善に力を入れ成果を出す。
②病院の使命、ビジョン、将来像を示す。
③病院事業に関わるマクロ経済の流れを予知し、対応、方針、新たな判断
をする。
④自己の病院の強み、弱み、可能性、ロマンを明確に持つと同時に、避け
られないマクロ経済の流れの下での特徴を創造し、勝ち組へのビジョンを
作る。
⑤医療と経営の質向上のための目標を数値化し、中期計画、年度計画を作り
月毎にチェックする。
→病院経営は人件費が50%、薬品・材料費が30%、残りは償却、金利、経費
となり利益として残るのは5%が精一杯。
・病院事業の特徴
①定期的な大型投資が求められ、資本コストが非常に大きい。
②利益率が他の事業に比べて低い。売上高利益率を5%挙げられる総合病院は
殆ど無い。
③労働人口(医師・看護師)の確保が大変。
○病院改革
・共同購入:米国では診療材料・薬・医療機器をまとめて購入するビジネスとして
1兆円産業が存在する。
日赤病院は全国に92、労災病院は全国に32。公的病院の年間売上を
4兆円とすれば、共同購入することで2割の800億円は削減が可能。
・請求漏れ:飯塚病院では20年前に売上の1%程の減点や請求漏れがあった。
(現在は0.4%)
公的病院の年間売上4兆円の1%の400億円は改善が可能。
・外注:病院事業でも医師看護師以外の殆どの職種を外注化していく手段がある。
①清掃:可能。高齢者が活躍できる職場。
②給食:可能だが、サービス業のシンボルとして重要。外注だと限界が出てくる。
③検査:可能であり、スケールメリットを出せる分野。
④医事課:可能だが、経営データを把握するには自前でスタッフを育成すべき。
⑤資材・物流:可能であり、コスト改善の可能性を持つ部門。SPDに切り替えると
ノウハウが無くなり外部にコントロールされるリスクがある。
⑥施設管理課:可能だが、クレームに即応が必要であり、患者との接点も多い。
⑦薬局:外注が主流。消費税メリット、スペースの有効活用。
⑧MEセンター:メーカーとタイアップし、共同で特許申請も可能。
⑨情報システム:メーカーと提携によりビジネスチャンスの広がりがある。