マクドナルド創業者であるレイ・クロックの自伝を読んだ。ユニクロの柳井社長とソフトバンクの孫社長の対談と解説が掲載されており、二人の日本を代表するアントレプレナーが影響を受けた人物による飾らない人生が語られている。創業メンバーとの確執、別れについては、よくある話ではあるが、当時の心境も隠さずに書かれていた。

「世界一、億万長者を生んだ男」という副題の通り、彼のビジネスに協力・支援した人は、金銭的に恵まれた人生を送ったようだ。
翻訳本の書名となった『成功はゴミ箱の中に』は、第9章の中に、社内の「競争相手にスパイを送り込むべき」という意見に対し、レイ・クロックが「競合相手のすべてを知りたければゴミ箱を調べればいい。知りたいものは全部転がっている」と答えた箇所からとられたようだ。本人が深夜2時に競争相手のゴミ箱を漁って、前日に肉を何箱、パンをどれだけ消費したのか調べたことは1度や2度ではないと書かれていた。
私が28歳の時に勤務していた半導体開発シミュレーションソフト会社の創業社長のアイヴァン・ペシック博士も同じことをやっていたと本人から聞いた事を思い出した。


成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)

成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)


<読書メモ>

○レイ・クロックのお気に入りの説教
 「やり遂げろ:この世界で継続ほど価値のあるものはない
  才能は違う:才能があつても失敗している人はたくさんいる
  天才も違う:恵まれなかった天才はことわざになるほどこの世界にいる
  教育も違う:世界には教育を受けた落伍者があふれている
  信念と継続だけが全能である


 「幸せを手に入れるためには失敗やリスクを超えていかなければならない。床の上に
  置かれたロープの上を渡っても、それでは決して得られない。リスクの無い
ところには成功はなく、従って幸福もないのだ。我々がシンポするためには、
個人でもチームでも、パイオニア精神で前進するしかない。企業システムの中に
あるリスクを取らなければならない。これが経済的自由への唯一の道だ。
ほかに道はない」


 「私は、職権というのは一番したのレベルにいる人の手にあるべきだと考えていた。
  それが人々を企業とともに成長させる唯一の方法なのだ」


 「大企業の上に立つ者には、背負わなければならない十字架がある。そこに上り
着くまでに、多くの友人を失うことになる」

 「マクドナルドのスタッフなら熟知しているが、客はお金を払った分だけの
価値を受け取るべきだという私のこだわりでもあった。『選手は応援している
客に対して最高のパフォーマンスをしなければならない』と公言した最初の
オーナーは私であった」
  (自分がオーナーとなった球団の選手の不甲斐ないプレーに激怒した後の言葉)


○レイ・クロックの金言、私はこう読む(柳井氏解説)

1.成功者の発想法
 ・商売の真髄を表すレイ・クロックの言葉
  「Be daring(勇気を持って),Be firtst(誰よりも先に),Be different(人と違った
ことをする)」
 ・ファーストリテイリングの「フアースト」は、レイ・ロックの「いつでも
どこでも誰でも食べられる」というファーストフードのコンセプトに触発されて
「いつでもどこでも誰でも着られる」チェーンをつくろうと、ファーストフード
から取った。
 ・日本マクドナルド1号店は、アメリカ側からは郊外型店舗で茅ヶ崎と候補地まで
決められていたが、藤田田社長は、「話題性を得る場所」ということで銀座にした。
 ・都市の中心に憧れの店があってこそチェーン展開が可能になる。


2.失敗を乗り超える力
 ・「新規事業は既存事業が生きる業種、もしくは相乗効果が望める業種でないと
いけない」という原理原則を知っていたが、理解していなかった。
(野菜ビジネスの失敗)
 ・成功者とは失敗を体験して、それでいて楽観的に前進していく人のこと。
 ・座右の銘《店は客のためにあり、店員とともに栄える。店主とともに滅ぶ》
   →会社が駄目になるのは経営者の心がけ


3.リーダーシップ
 ・リーダーシップとは決してあきらめないこと。諦めることイコール会社が潰れること。


4.成長する組織づくり、人づくり 
・本質を見抜く力や真の経営能力を身につける為には、経営に携わっていない時点から
  経営者の意識を持って仕事をすること。
 ・経営とは、自分の仕事や会社の事業が顧客に何をもたらしているかを考える
ことであり、経営者の視点で自分なりの判断を下していくことが訓練になる。


5.ヒットの作り方
 ・マクドナルドは現在、世界で約3万店あり、1日5千万人が来店する。
 ・ユニクロは現在、年間4億点の商品が売れ、殆どの商品が何十万点、何百万点
というオーダーで売れている。
 ・「これ買ってくださいるこれは絶対にいいものです」と断言できる商品は売れる。


6.ライバルトどう戦うか
 ・競争相手に勝とうとするならば同じ土俵に上がっては駄目で、自分だけの
ポジションを新しく作り、そこを大きく伸ばしていくしかない。


7.大富豪の金銭感覚
 ・金をも儲けるより使う方が遥かに難しい。(柳井氏は)家族の分まで含めると
  時価総額で5千億円くらいの資産を持っている。
 ・稼いだ金をどう使うかはその人間の人生に対する考え方が反映される。
 ・現在サポートしているのは唯一、『考える人』(新潮社、2002年7月創刊)
という季刊誌で、広告はユニクロの数ページの記事広告のみ。


考える人 2007年 05月号 [雑誌]

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