最近元気のいい出版社「幻冬舎」のグループ会社で、自費出版をビジネスにしている幻冬舎ルネッサンスが主催するセミナーに参加してきた。

単なる自費出版ではなく、無名の著者の作品発掘に対する幻冬舎の本気度を感じるセミナーであった。
現在、書店で平積みになっている『氷の華』の初版は、自費出版としてルネッサンスより出版され、作品が高く評価され、幻冬舎から再販が決まったそうだ。文庫化、ドラマ化も視野に入っているらしい。




<初版本>

氷の華

氷の華


<再販本>

氷の華

氷の華



セミナーのメモ>


幻冬舎の歩みと自費出版を手がける理由
 ・1993年11月に「出版界に風穴を開け、新風を吹き込みたい」思いで四ツ谷から出発。
 ・単行本6冊からスタートし、文庫本、雑誌、新書まで展開してきた。
 ・幻冬舎が有名になる中で、様々な作品を送付してもらったが、真正面から作品と
  向き合う時間が捻出できず、受領するのを全て断ってきた。
 ・著名な作家だけに出版のチャンスを与えのではなく、広く書き手を育て、出版の
  チャンスを提供したいと純粋に思っていた。
 ・新しい才能と作品をこのまま見捨てても良いのか?と考え、これまでの一般的な
  自費出版本とは違うものを提供していくことを2005年に決め、ルネッサンスを設立。
 ・本には1冊1冊、生命があり、普通の企画では出版できない編集者の気持ちが入った
  仕事をしてみたい。
 ・自費出版本ではあるが、全国に流通させて、書店の店頭に著名作家の隣に
  どうすれば並べてもらえるか、表紙のデザインなど、幻冬舎のブランド力、
  企画力、編集力を投入し、いい作品が売れる所まで持って行きたい。
 ・「これって、自費出版?」と店頭で手にした人が思うような作品を世に出したい。
 ・本社に負けないレベルの作品を個人出版で実現したい。
 ・人生の中で1冊の著作があるというこは素晴らしい事。


○出版セミナーの内容
 ・「書きたい人、書いている人へ、より作品の完成度を高めるためにワンポイント・
  アドバイス」を無料で提供する。
 ・実際に出版社を見てもらい、編集者に会ってもらい、情報提供の場と位置づけ、
  毎月末の土曜日にセミナーを開催。
 ・著書を書くに当たってどうしたらいいのか、セミナーで3ステップで段階を踏んで
  教えている。
   1.「作品を書く為に作品の設計図を作ろう」
   2.「文章表現における留意点」
   3.「文章の見直しと推敲・自己審査」
 ・契約までは全て無料で、テーマだけの段階から、実現に向けて提案していく。


○講演メモ
 『編集者は作品の何をみるか?12か条』 
  幻冬舎ルネッサンス 編集局長 神埼東吉氏

1.何をかいているか、そのテーマ性
  右を書く為には左も抑えねばならない。愛を書く為には憎しみが触れられているべき。

2.著者の思いがおりこまれているか  読者に伝わるかどうか?自分の文章を人に読んでもらう為にどうするか?
  一番大事なのは感性だが、自分の言葉で書いていけるのはなれた人だけ。

3.ストーリー構成が組み立てられているか
  起承転結。バランスとボリュームの付け方をまず設計する。

4.書き出しの一行に魅力があるか
  分からなければ、一番最後に書けばよい。

5.だらだら病になっていないか
  センテンスの長さへの配慮がされているか。長い文章の間には、短い文章を入れて
  あげると読みやすい。
  分かってもらいたければ、読者が読みやすいようにサービスが必要。
  「ここではきものを脱いでください」
    →「ここで、はきものを脱いでください」
    →「ここでは、きものを脱いでください」
  言葉を修飾語でかぶせすぎない。形容詞を選んで使用する。
  
6.人物設定が各自明確に描き出されているか
  登場人物の年齢、生い立ち、好み、クセを設計図に組み入れておく。
  書く前から人物設定を決めておく。
  常日頃から、周りの人の人物描写をするクセをつける。

7.著者の表現になっているか
  今風に書こうとして、無理に若者言葉を使用する必要はない。
  文章くささになってしまう(衒い・てらい)

8.会話が成立しているか
  会話にはキャッチボールが必要。

9.文体にリズム感があるか
  長い短いのセンテンスを考慮する。

10.クライマックスがどこにあるか
  最初にヤマ場にフラッグを立てて、そこを目指して書くやり方もある。
  ヤマ場は1つだけではなく、そこに至るまでに周辺に山を入れておき、
  序々に盛り上げていく。
  ヤマ場は断崖絶壁である必要がある。

11.エンディングが納得できるか
  最後が分からない作品が多い。
  ストーリーの閉じ方、どこで閉じるかを考える。
  例として、「シェーン」「マディソン郡の橋」のように、男が登場して
  始まり、エンディングは男が出て行く。
  エンディングを先に書くと、そこに向かって書かざるをえなくなる。
  足りなかったら、エピソードとして途中に入れる。

12.次回作に期待ができるか
  書籍のオビは出版社側のスペース。
  何を書こうとした作品なのか、自分の作品を自分でほめる。
  その通りに作品が書かれているか、自分の作品を批判してみる。


○出版費用について
 ・出版費用は一概にいくらとは言えない。
 ・出版費用に関係する要因として、本のサイズ、ページ数、表紙、カバー、
  白黒orカラー、発行部数、編集費、印刷費、製本費
 ・一般的な目安としては、四六版で、ほぼ完成レベルの原稿、発行部数千部。
  であれば、1ページ当り8千円〜1万円程度。
  総額でだいたいが、160万円〜200万円となる。
  →自分の著作を持つ事に意義を感じている人が対象となる。
 ・実売数で初版は8%、再販は10%が、本人の取り分としており、殆どの場合、
  印税は見込めない。