早稲田大学で開催されている公開講座『勝ち組ベンチャー企業の条件』の9回目の講師は、NTTドコモ執行役員の夏野剛氏であった。

社長失格』の著者、板倉雄一郎が社長をしていたハイパーネットの創業メンバーだったとは、知らなかったので、夏野氏を見る目が変わり、親しみを感じた。
母校の後輩に対する講演ということで、伸び伸びと講演されて、大変面白かった。
これまでに殆どの有名大学から講演を頼まれたが、早稲田が最後で、今回初めて早稲田での講演とのこと。「その辺が早稲田はトロイよねぇ」と言っていたのには笑えた。
現在、TVで流れている「Docomo 2.0」のCMは7分のドラマストーリーとなっており、それを15秒毎に分割して流しているらしい。

ケータイの未来

ケータイの未来

ちなみに、この著書は会社の了解を取っていないそうだ。
Iモード・ストラテジー』の中で書いた9割は実現できた。<講演メモ>
講演テーマ:「私のフィロソフィー〜1兆円を稼ぐ男の仕事哲学」

ベンチャーで1兆円の売上を出しているのは自分だけ
 ・ドコモに入社して10年。1T企業の社長は殆ど知り合い。
 ・どの組織にいても、新しい物を生み出す事、チャレンジしていく事をしないと
  社会に進化はない。
 ・iモードは1999年にスタート。8年前の6月には利用者40万人、8月には80万人に
  急増した。収入も0円から昨年は1兆2千億円となった。


○何をしている人?
 ・iモードの創業者。
 ・iモード松永真理さんとは、自分がリクルートでA職アルバイトの時の上司。
 ・8年間で、4800万人が使用するサービス、5年間で1兆円を稼ぐビジネスを実現。
 ・iモード関連ビジネスでIPOした会社は40社以上。
 ・おサイフケータイのユーザーは2千万人。他の合計社は1千万人。
 ・海外でのiモード利用者は600万人。
 ・NTTドコモの最年少役員で、部下400人。
 ・年間海外出張件数30回。
 ・1日ミーティング、10件。
  →1週間かけて判断できる事は5分で決める。ヒラメかない事は意味が無い。


キッズケータイマーケティング
 ・統計データに依存してはダメ。平均値で商品・サービスを考えてしまう。
 ・どの市場にも5%のアンカーのオタクがいて、80%はフォロアー。
  →iPodMACユーザーの3%しか最初から狙っていなかった。
 ・新カテゴリーの商品のマーケティングには、統計データは使えない。
 ・統計では出てこない新しい紙上をどう見つけるかが重要。
 ・ドコモの市場調査担当者は、全国平均アンケートを実施し、小学性の学年別
  携帯保有率を調査した結果、4年生は40%、1年生は10%だった。
  彼らの出した答えは、小学高学年にターゲットした商品を開発する。
  →「バ〜カ!!」
 ・毎年11月1日に行われる天現寺の某幼稚舎の入試に来る2000組をターゲット。
  お受験、習い事、子供の為にはお金を惜しまない層、小学低学年をターゲット
  にした。
 ・女の子は4年生から男の子は6年生から独り立ちして、自分の好みを意識する。
  →小学高学年は、大人向け携帯を欲しがるハズ。
 ・ワンセグ携帯は40歳維持用に人気がある。若い世代はテレビを携帯で見ない。


○信条1「一寸先は闇」
 ・全ての状況は常に変化し続ける。
 ・一流企業も10年後には、倒産するかも・・・
 ・ちょっとした操縦ミスが命取りになり、間違いが成功にもなる。
 ・楽勝なハズの競合が、いつの間にか強くなったり、成功している事が正しく
  評価されなくなったりする。
 ・成功したら証拠を作っておく。本にもする。
 →結論:今できることは、全てやっておかないと後で後悔する。


○信条2「成功の鉄則は70%の運、20%の努力、10%の才能」
 ・但し、合計が100にならないと大きな成功はない。
 ・才能というのは、自分が好きで得意な所に進むということ。
 ・運をつかめる時に命一杯やっておく。
 ・人生において大勝負のチャンスは滅多にない。
 →結論:今できることは、全てやっておかないと後で後悔する。


○信条3「花の命は結構長い」
 ・大きく咲いた花は長持ちする。
 ・年を取れば取るほど実績のある人に仕事は集中する。
 ・だから、少数の80歳の現役と、多数の60歳の定年に分かれる。
 ・でも、いつかは枯れる。
 →結論:今できることは、全てやっておかないと後で後悔する。


○信条4「全てのビジネスは仁義と任侠(Win−Winの関係)」
 ・「義理と人情」とは違う。
 ・人とのネットワークが仕事を大きくする。
  →IT革命で一人の人間が手に入れれる情報が多すぎるようになり、しっかり
   理解できる人が勝負に勝つようになった。ジャンル毎に凄い人のネットワーク
   が必要になる。
 ・巻き込んだ人を裏切れない。
 ・仕事が大きくなるほど、辞められなくなる。
 ・人との信頼関係は、そう簡単には得られない。
 ・携帯の普及で、5人位の親しい人と更に密に連絡をとるようになり、二股をかけれ
  なくなった。
 →結論:今ある人のネットワークでできる事を、全てやっておかないと後で後悔する。 


○信条5「死ぬ時に『これ以上はできなかったな』と言って死にたい」
 ・悔い無き人生が目標。
 ・でないと、失敗を恐れ、大きな事ができなくなる。
 ・失敗を恐れるとケンカができなくなる。
 ・ケンカできないようでは、大きな事ができなくなる。
 →結論:今できることは、全てやっておかないと後で後悔する。


○仕事哲学 
 ・当たり前のことを当たり前にやる。
 ・絶対にやってはいけないこと。
   言った事に責任を負わない。相手の気持ちを察しない。今やるべきことを後回しに
   する。対価を払う人の立場に立たない。人のセイにする。


○ケンカ三原則
 ・以下の3条件を満たしている時はケンカをする。
   1.自分として論理的に筋道、理屈が通っている。
   2.自分が成功を確信できること
   3.会社(社会)の為になっていること。←この為にはケンカに負けても良い。
 ・変化を嫌う人はどの組織にも多くいる。彼らには新しいビジネスモデルは作り
  出せない。
 ・ITの世界は、変化しないと死んでしまう。毎日進化しなければならない。


○マネジメント哲学
 ・部下に言い訳をさせない環境を作るのみ。
 ・管理職になると働きやすい環境を作る人と仕事のチェックをする人に分かれる。
 ・一人では何もできない。
 ・部下が働けるチャンスを与えて、給料以上働いてもらう。


iモードの戦略
 ・オフネットの時間の方が実は長い。その時間をiモードで埋める。
 ・フェリカ、赤外線、QRコードにより、ローカルで繋がる。
 ・おサイフ携帯は、トラフィックを生まないと言われたが、Suicaの課金を
  チェックしている。
 ・体に一番近いデバイスとして、持っている価値を最大にする。


○グローバルな位置づけ
 ・5年前の第二世代携帯の時までは、日本の携帯は世界に遅れていた。
 ・しかし、ノキアは進化しない事がビジネスモデルであるとし、量を売る方針を
  取っており、95%は安物の機種。


○機種変更のジンクス
 ・PとNのユーザーは、機種変更後もPとNを仕様する人が多い。
  →去年からNECと松下は共同開発することになり、NはPになってしまった。
   外見は異なるが中身のOSを統一した。
 ・ナンバーポータビリティが始まっても、あえて番号を変えて機種変更する
  人の方が多かった。
  →「2in1」は、一方の番号だけを変更できるので、女性に超人気。