最近、米山公啓氏の著書を探して片っ端から読んでいる。本書は『経済界』に連載された「医療を治療する」(2003年4月8日号〜2004年3月23日号)に大幅加筆・修正を加えたものだそうだ。

医者にNO!と言うための55の知識

医者にNO!と言うための55の知識


<読書メモ>


○医学部教授の論文ねつ造
 ・満足な実験結果が出せなくても、何らかの成果を発表しないと次年度の
  予算がもらえなくなる。
 ・論文で問題にされるのは、体裁が整っていることであり、症例数、英文
  抄録の間違い等、研究の本質的な点は議論されることは少ない。
 ・DNAの二重螺旋構造を発見したワトソンとクリックの研究ですら、他の
  研究者の業績をうまく利用して考え出されたものと問題になっている。


○医者のアルバイト
 ・大学病院の医者は週に1日か2日は、他の病院でアルバイトをしている。
 ・週に1日のアルバイトでも月に30〜40万円の副収入となる。
 ・大学側も、医者の給与を平均的なサラリーマンより高くできる為、
  アルバイトを黙認している。
 ・周辺の病院は医師を確保でき、大学病院は安い給料で医師を雇うことが
  できるので、どこからも文句は出ない。


○誰が入用で儲けているか
 ・病院経営は困難になり、医者やナースの給料は下がり、医療業界が不況に
  苦しむ中、ひとり製薬会社だけが利益を上げている、歪な業界構造となっている。
 ・以前は医者と製薬会社ががっちり組んで、医者に金銭的な恩恵で、還元される
  仕組みがあったが、近年、製薬業界の自主規制で健全体質となっている。
 ・医療の中で生み出される利益が偏っており、製薬会社の利益を医療の現場に
  戻せる仕組みを作る時期にきている。


○医学部の名義貸し
 ・地方病院では、意思の確保は、地域の大学病院の医局に頼らざるを得ない。
 ・医師を派遣された病院からは、研究費や医局運営費として医局に金が入ったり、
  裏金として直接、教授に金が渡る。以前は数千万円の金が動いていた。
 ・雇用雑誌から医局に属さない医師を一本釣りすると、協調性のなかったり等
  病院全体がかき回され、問題となることもあるが、医局に所属する医者で
  あれば、不問であれば教授と交渉して医者の交代を要求できる。


脳卒中センターができない理由
 ・内科の中で循環器は花形で、循環器病センター、ハートセンターは、心筋梗塞
  等の心臓病の救急医療には力が入っている。
 ・しかし、心筋梗塞より脳梗塞の方が多いのに、脳梗塞の救急医療は普及していない。
 ・脳卒中センターができない原因は、病院経営の問題。
 ・脳卒中センターを作ると脳卒中の重症患者が集り、早期退院ができなくなる。
 ・脳卒中の専門は、神経内科医と脳外科医であるが、医師の数が少なく医師を
  確保できない。
 ・救急医療は臨床的には重要であるが、医師の労力が大きく研究ができないので、
  大学病院のメリットが少ない。


○医師・看護師派遣解禁が医局を変える
 ・今までの派遣業者は仲介料として利益を取っていた。
 ・法律上は派遣が可能となったが、実際には医師派遣が機能していないのが実態。
 ・法律改正で医師のお試し期間が儲けられたが、その期間中に医療訴訟が発生
  したら派遣会社が困るので、実際にはやられていない。


○病院の評価
 ・医師会と厚生労働省が作った日本医療機能評価機構の認定は、病院運営の
  健全性を評価するもので、医療そのものに踏み込んでいない為、患者には
  実践的な情報にはならない。
 ・病院の治癒率を評価にしようするようになると、危険な手術、最新の治療を
  試みるのを躊躇するようになり、医療の進歩にも影響する。
 ・基本的な評価基準
   手術後24時間以内に再手術をする割合、病院のハードウェア、院内感染
   への取り組み、リスク・マネジメント、一般職員への医学教育、情報の
   公開性など。
 ・ランキング本には、手術中の24時間以内の死亡率、1ヶ月以内の死亡率が
  載っているが、大差がなく意味がない。
 ・都内の有名病院では、院内で働く医師の詳しい経歴を書いた冊子が、
  病院玄関口に置かれ、だれでも自由に見ることかできるようになっている。


○病院の株式会社化
 ・病院の株式会社化に反対するのは医師会。
 ・現在の健康保険制度の上では、病院経営は今以上改善することは厳しい。
  医療産業として、病院周辺環境を整える為には、豊富な資金が必要になる。
  その為には、株式会社で資金を得て、患者の望む病院作りへの1つの方法と
  考えるべき。


ジェネリックを何故使わないのか
 ・海外では50%以上はゾロ品
 ・同じ成分でも、製薬会社が違うと適応症が違い、効果が同じかどうかの
  チェックが十分にされていない。
 ・医師がジェネリックを使おうと使わまいと、自分には関係なく、「患者側の
  出費を抑えよう」という発送までない。


○禁煙でガンを減らせば、医療費が減る
 ・たばこが無ければ年間約48万人のがん患者のうち、毎年9万人のガン患者が
  減るという統計試算を厚労省研究班が発表。
 ・喫煙者のガン発生率は、吸わない人に比べ男性で1.6倍、女性で1.5倍。
  禁煙した人のガン発生率でも男性1.4倍と、過去の喫煙の影響は完全には消えない。
 

○なぜ日本では、偏頭痛の治療が進まないか
 ・偏頭痛の治療薬は、通常の痛み止めでは効かない。
 ・筋肉からくる筋緊張型頭痛との混合型の場合は、偏頭痛の薬でないとダメ。
 ・トリプタン系の偏頭痛治療薬(ゾーミック、レルパックス)は劇的な効果がある。


○救急医療を救え
 ・最近、医者の中には自分の生活を楽しみたいという発送が生まれている。
 ・救急医療は滅私的な部分で支えられており、医師の総が薄くなり、志の高い者
  しか仕事続けられない。
 ・いゃの労働条件を真剣に考えるべ状況になっている。


○臨床医は交代性にして数を増やす
 ・大学病院に多く医師がいながら、研修医や指導医の労働時要件が悪いのは、実際に
  臨床をしている医師が少ないから。
 ・働く者が健康で無理がない職場でなければ、どんな職業でも十分に能力は発揮
  ではないのは当たり前。