書名にインパクトがあったので、思わず手にとってしまった。納得する部分もあり、支払うのが当たり前と、これまで全く疑問を持たなかった自分の素直さを反省した。小市民的な生活を送っている日本人は、国家的な詐欺を認識しているのか、それとも知らないのか、本当にお人よしである。日本人には「従順な遺伝子が人口の70%もある」という科学的調査がらしい。
払うのが一般的とされている料金(高速道路通行料、NHK受信料、交通違反反則金、国民年金、国民健康保険料、サラ金の金利、敷金、介護保険料、源泉所得税)を支払うことのメリットと支払わないことのデメリットも説明されており、社会制度の勉強になった。
- 作者: 和合秀典,今井亮一,松谷宏,本多勝一,日向咲嗣
- 出版社/メーカー: 三五館
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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<読書メモ>
○高速道路通行料(2005年不払い件数93万件)
・高速道路通行料を支払わないと決めた「フリーウェイクラブ」という
会員数2000人の団体がある。
・戦後の復興時に、復興資金捻出の為、道路から通行料金を徴収する
「道路整備特別措置法」が1956年に成立。30年後は無料とする時限立法。
・道路法では道路は原則無料となっており、矛盾する2つの法律が存在する
ことになった。
・30年の期限が迫った時、従来は路線毎に完成30年後に無料開放とされて
いたが、延長工事も含めて完成から30年後とする「プール料金制」が
導入された。
・首都高速が500円から600円値上げされた1988年に、フリーウェイクラブ
が誕生。「旧料金通行宣言書」(支払い拒否の理由、住所、氏名、
連絡先が明記)と500円玉を料金所で渡して通行することにした。
・2001年1月1日午前0時よりフリーウェイクラブの会員は全国の有料道路を
「無料通行宣言書」で無料通行している。
・フリーウェイクラブの行動の効果
- | 首都高速通行料 | フリーウェイクラブの活動 |
昭和37年 | 50円 | - |
昭和38年 | 100円 | - |
昭和39年 | 150円 | - |
昭和45年 | 200円 | - |
昭和49年 | 250円 | - |
昭和51年 | 300円 | - |
昭和55年 | 400円 | - |
昭和60年 | 500円 | - |
昭和62年 | 600円 | 設立、500円通行開始 |
昭和63年 | - | 首都高速道路公団を提訴 |
平成4年 | - | 当初の約束である30年が経過 |
平成6年 | 700円 | - |
平成13年 | - | 全国の優良道路の無料通行を開始 |
平成14年 | - | 会員2000人 |
平成15年 | - | 日本道路公団を提訴、政治団体・新党フリーウェイクラブ設立 |
平成17年 | - | 四公団の民営化開始 |
・道路民営化で、新株式会社の利益で45年かけて40兆円の借金を返済
することが決定。
・道路特定財源(ガソリン税、重量税で年間5兆円)の余剰金は年間7千億円。
・平成17年10月1日の民営化の日、株式会社となり、新道路特別措置方の
罰金法案で無料通行は刑事罰となり、現場逮捕を料金所で試みた。
料金所職員から「今日から民営化するので、宣言書は使えない」と
言われたが「はい、わかりました。でもこのままと通りますから」と
言って通過したが、何も起こらなかった。
・新道路特別措置法では、旧公団側は告訴→検察へ挙げられ起訴→裁判
開始と、民間と同じ流れが必要となる。
・平成18年6月15日、民営化後初の半期決算が発表され、6社の合計
純利益が325億円、うち首都高の純利益が29億円とあった。
その後66億円の試算過大計上が発覚し、首都高は37億円の赤字。
6社合計の純利益は288億円となり、年間に換算すると576億円で、
40兆円の返済に694年間必要となる。
・法律では45年間で40兆円を返済するとしているので、年間8900億円の
利益を45年間出し続けねばならない。売上純利益率28%。
石油資源は40年分の埋蔵量しかないと言われる中、地球上の石油資源が
涸れ果ててもなお5年間の返済をしなければならない。
○NHK受信料(年額1万6740円。不払い率26.9%)
・不払い率は滞納者・未納者(270万人)と未契約者(960万人)を不払い者と
して、世帯・事業所数(約4600万件)で割った数字。
・玄関に勝手に貼り付けられた「NHK受信票」の下へ「NHK受信料支払い
拒否の家」という紙を貼り付けている。
・『NHK受信料拒否の論理 (朝日文庫)』本多勝一、朝日文庫
・『NHKの正体』週刊金曜日編、週刊金曜日別冊ブックレット
○国民年金(1世帯当り年間約33万円)
・2006年8月末現在、1人当り月額1万3860円×夫婦の年間負担額。
・支払わない場合の不利益
65歳以降、公的年金を受給できなくなる
払い続けてきた厚生年金が掛け捨てになる
支払い能力ありと認められたら、預金を差し押さえられる可能性有
長期滞納者には、有効期限月の国民健康保険証の発行を予定
・2017年まで毎年280円づつ引き上げられ、最終的に月額1万6900円になる。
・国民年金は、今や自営業者の為の制度ではなく、勤労者の1/3と言われる
非正社員の為の制度となっている。
・2005年の厚労省の調査では、正社員の平均月給は34万8100円(男性、
41.3歳、勤続14.1年)に対し、非正社員の平均月収は22万1300円(男性、
45.1歳、勤続6年)。賞与は無いので、非正社員は正社員の半分以下。
・厚生年金加入者は国民年金にも二重加入している為、国民年金(基礎
年金)の負担は同じ。しかし、正社員は会社が半額を負担してくれる。
・国民年金だけの人は、40年間フルにら支払っても月に1人6万円程度しか
貰えない。厚生年金の標準世帯は夫婦で月額23万円貰える。
・未納のデメリットとして、強制徴収と過去に納めた厚生年金が掛け捨て
になってしまう。
・東京都は平成17年度、約5万7千人の長期未納者に対して、強制徴収を
実施し、銀行預金等の差し押さえ件数は1051件。(前年は22件)
・「最終催告状」までは脅しでが、「催促状」が来たらヤバイ。
・日本の年金制度では「25年以上(厚生年金+国民年金)保険料を支払わ
ないと1円ももらえない」仕組みになっている。
・国民年金には、将来の年金とは別に、遺族基礎年金という生命保険
昨日が付いていて、夫死亡の時には、残された妻子(子供1人)に
毎年100万円程度支給される。
・保険料免除制度では単身者年収122万円、夫婦子供1人家族年収207万円、
夫婦子供2人家族年収257万円以下は、保険料は全額免除される。
・給与所得者でも失業したタイミングで、免除申請すると、丸々1年間
全額免除が認められる救済制度がある。
・保険料全額免除期間は、将来の年金額には繁栄されないが、受給資格
期間には算入される。10年厚生年金を払った人が、未納のままに
しているとその間に支払った保険料は掛け捨てとなるが、残り15年間
を免除でつなぐと、25年間の受給資格期間をクリアし、支払った分
くらいは回収が可能となる。
・保険料免除でも、公的年金制度として税金から支出される国庫負担
部分がある為、1/3払ったこととなる。平成21年以降は国庫負担を
1/2まで引き上げられる事が決まっている。
・サラリーマンの社会保険料は、法的には本業と副業の収入を合算して
保険料を納付する仕組みでが、実際の運用では、本業の給与にのみに
かかり、副業には一切かかっていない。
・厚生年金には年収130万円未満ならなれる3号被保険者という制度が
あり、自営業の場合は「所得13万円未満」でOKなので、1人分の
国民年金がタダになる。
・年収500万円の自営業夫婦の場合、国保が高い自治体だと、最高額
53万円、介護保険料8万円、国民年金夫婦分33万円と、年間の社会
保険料は94万円になる。
・法人化して給与を月額10万円にすると、会社負担分も含め、健保が
年間11万円、厚生年金が年間16.8万円となり、社会保険料は総額28
万円。家族に扶養の範囲内で給料を支払い、世帯収入を確保する。
○国民健康保険料(1人当り平均年間7万4076円、世帯当り
年間14万5009円、不払い率8.7%)
- 作者: 松谷宏
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2000/12
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6ヶ月未納で短期保険証が交付(自己負担は通常の保険証と同様)
1年以上の未納で、被保険者資格証明書か交付(自己負担は一時
全額支払い、後日申請すると7割払い戻し)
1年6ヶ月以上で、保険給付指し止め
・2006年5月18日に「医療制度改革関連法案」で70歳以上の高齢者にも
年間3万7千円の保険料が賦課されることになった。
・1世帯当り最高限度額という意図゛があり、自治体によって上限額が
決まっている。
・実際には別々に生活している「祖父母世帯」「息子世帯」「孫世帯」
が、住民票上では「同居」となっていて、驚くほど低負担で済んで
いるケースもある。
・保険料の算定は全国一律ではなく、市町村の裁量に任されており、
財政事情により、その差は5.2倍。
・平成15年度の国保の赤字は3800億円。
○介護保険料(全国平均年間約11万円、不払い率1.6%)
・高齢者の82%は年金天引き、普通納付では不払い率8.1%。
・支払わない場合の不利益
介護が必要な状態になった場合、莫大な費用負担が生じる
1年以上滞納すると、費用の全額をいったん支払わないと介護
サービスを受けられない
1年半以上滞納の場合、給付指し止めとなり滞納分を差し引かれる
2年以上滞納の場合、介護サービス利用料は3倍とられる
・介護保険は市町村が運営主体であり、65歳以上の住民は全員
「第1号被保険者」となり、届出や申請手続きは不要で、「介護
保険被保険者証」を役所が送りつけてくる。
・40歳〜64歳は「第2号被保険者」となり、健康保険料に上乗せして
徴収される。
・年金天引きの強制徴収か65歳以上の8割を占める為、全国平均でも
98%の徴収率を維持している。
・遺族年金・障害年金は課税の対象ではなかったが、2006年10月から
遺族年金・障害年金からも天引きが開始された。
・高齢者介護に「保険制度」を採用しているのはドイツ、オランダ、
日本だけ。
・2000年の介護保険導入以前は、介護費用は全額公費(国50%、都道
府県25%、市町村25%)で賄っていたが、制度導入後は公費負担を
半減して、残り半分を「介護保険料」として40歳以上の国民に
負担させることとした。
・65歳以上は介護費用の約2割を65歳以上の人口で割って負担
させ、全額本人負担とした。
・高齢者の負担は、制度開始時は全国平均で2900円程度であったが、
2012年には6000円に倍増する見通し。
・要介護認定にならないと給付はなく、65歳以上の高齢者のうち、
要介護認定者は16%程度であり、この制度は10人中8.5人は給付を
受けないことを前提とした制度である。
要介護認定数は70〜74歳では6.3%、65〜70歳では2.7%、85歳で50%。
一度も給付を受ける機会のない「掛け捨て保険」。
・介護保険は定額制である為、低所得者ほど負担率が高くなる。
・「要支援1・2」と認定されても介護サービスは受けられず、
家事サービス、車椅子、介護ベッドのレンタル、介護タクシーの
利用もできなくなった。
・介護保険料に怒る一揆の会
- 作者: 伊藤周平,月刊『ゆたかなくらし』編集部
- 出版社/メーカー: 萌文社
- 発売日: 2001/10
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