ゲノム創薬とPGx
文部科学省の支援行われている「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」(別名「30万人プロジェクト」)で、研究計画を患者に説明するメディカル・コーディネーターの講習会に参加した。
第26回目となる今回の講習が最後となったが、講師をこれまで務めて頂いた大西洋三先生(オーダーメイド創薬・代表)の講義は、今回も大変興味深い内容だった。
<講義メモ>
○ゲノム創薬とPGx(Pharmacogenomics/Pharmacogenetics:薬理遺伝学)との違い
・ゲノム創薬は、病気の原因を調べ、創薬ターゲットを探索するツールとして
遺伝子情報を使用する。研究開発として製薬メーカーで実施される。
・PGxは、薬について誰に効くか(有効性・安全性)を予測するバイオマーカー
として遺伝子情報を使用する。臨床研究として病院で実施される。
○東京女子医大「関節リウマチのオーダーメイド医療の研究」
・抗リウマチ薬「メトトレキサート」の副作用の可能性、投与量を投与前に
遺伝子検査によって診断する臨床研究。
・メトトレキサートは、元々は、抗がん剤として開発され、現在は外来で
リウマチ薬として、一般的に処方されている。
・女子医大で5千人のリウマチ患者データを元に、データベースを構築し、
400人を対象とした臨床研究で、副作用が減っていることが確認されている。
○薬の非有効率(効かない割合)
喘息 | 40〜75% |
がん | 70〜100% |
うつ病 | 20〜40% |
糖尿病 | 50〜70% |
消化器性潰瘍 | 20〜70% |
高脂血症 | 30〜75% |
○副作用のデメリット(1994年の米国のデータ)
・入院患者のうち重症な副作用発生率 6.7%
・うち致死的な副作用発生率 0.32%
・年間副作用発生人数 2,216千人
・年間副作用死亡人数 106千人
→副作用回復の為に、700ドルが費やされた。
○国民医療費31兆円の内訳(2002年)
生活習慣病 | 9.8兆円 |
高血圧 | 2.7兆円 |
がん | 2.5兆円 |
脳血管障害 | 2.0兆円 |
糖尿病 | 1.8兆円 |
虚血性心疾患 | 0.8兆円 |
○がんへの対抗方法 「抗体医薬」と「ワクチン療法」
・抗体医薬:分子標的薬となる化合物を探すのに莫大なコストがかかる。
・ワクチン療法:がんに特有のタンバク質を発見し、それを増強するだけで、
大学の研究室の装備でも実現可能。
→がんに特有に発生するタンパク質を、あえて大量に投入することで、
体の衰えていた抵抗力が目覚め、がん細胞を攻撃し始める。
→大阪大学・微生物研究所はインフルエンザワクチンの製造許可を取得している。