フジマキ兄弟が読書よりの質問に各々が答えるという形式となっている。見開きで完結していてサクッと読めた。この兄弟は本当に面白すぎる。本書は朝日新聞土曜版「be」の2004年4月3日〜2006年12月23日に連載されたフジマキ兄弟の共同コラムからの抜粋。


<読書メモ>


○兄の藤巻健史語録
・株は「景気予想の頭脳戦」
・経済予測をする時、専門家は率か絶対値か、自分に都合の良いほうで論を進める。
 景気低迷時に好景気の到来を予想するアナリストは、率に焦点を当て、一方、
 景気低迷が続くと予想する人は、ひたすら「下落は下落だ」と
 絶対値を誇張する。
・2001年9月11日、米国同時多発テロ後、「NY株大暴落、史上最大の下げ幅」
 という報道を見て、パニック売りをした投資家は大底で売却したことになった。
 「1929年の大恐慌では3日間で35%下げたにの比べれば、この日の下げは7.1%に
 過ぎない」と、買いに向かった投資家は財を成した。
・政府やエコノミストが使うインフレとかデフレという言葉が、資産価値の動向
 なのか、日常品価格なのか区別する必要があり、注目すべきは資産価値の動向。
 82年代後半のバブル経済は、土地や株などの資産型が急上昇したことでもたら
 されたが、注意すべきは狂乱的に上昇したのは資産価値だけで、物価の上昇は
 3〜4%どまりだった。
・信託銀行で「死亡退職金の藤巻」と言われていた。
 最初の1週間はお線香だけ持っ毎日訪問。次の1週間はお線香に名刺を添えて
 置いてくる。ここまでは全て無言。そして3週目にお線香と簡単なパンフレットを
 私、「何かお役に立てるようでしたら、ご連絡ください」と言う。悲しみに
 浸っている親族の気持ちにできるだけ寄り添う。多言は無用。
・元マイクロソフト社長の成毛眞さんは、銀行から固定金利で借金し、不動産
 物件を購入し、「購入した不動産が財産ではなく、超低金利で借りた固定金利
 の借金こそが財産だと思っている」と言っている。
・国の借金は830兆円に達する(2006年9月現在)。財政破綻に見えるが、実行可能な
 徳政令のようなインフレという解決策が1つだけある。長期国債と名の固定金利
 借金を重ね、土地などの資産を保有するという国のバランスシートは完全な
 インフレ期待型。一方、せっせと預金することは、国とは逆のデフレ対応型。
 銀行が国債を買っていれば、国の尻拭いに手を貸す行為。国という強いものに
 挑戦しても個人に勝ち目はない。私なら国のやり方に倣う。
・為替は最終的には国力に反映する。20年後に日本経済が大繁栄していれば、
 大幅な円高になる。一方、日本経済が大失速していたら超円安となる。
 長期的視野に経って、余裕資金を外国投資に回すことは人生のリスクヘッジ
 でもある。
・物事には必ずリスクが付いてまわり、勝負の分かれ目は、いかにリスクを
 減らすかにかかっている。
・今の日本はお金がジャブジャブに余っている。企業と家計に存在するお金の量、
 すなわちマネーサプライは、未だバブル当時ほどではないが、日銀が発行する
 紙幣量は、この15年間で2.5倍近くに増えている。
 これでけ紙幣が刷られるとお金の価値が下落し、相対的に土地や株の資産価値が
 上がることになる。
・バブルの頃、長期金利は8%に達した。現在の1.5%(206年2月末)という異常に
 低い金利水準は例外で、何かきっかけがあれば急騰すると考える。
 日銀の量的緩和策の解除は、日銀の負債である当座預金を減らすことを意味し、
 負債を減らす為には当座資産(大部分は国債)を手放さねばならない。
 日銀が買い支えてきた国債が市中に出回れば、国債の価格下落は必至であり、
 すなわち金利の上昇となる。
・今でも「日本は貿易立国」と誤解している人がかなり多い。2005年の国債収支の
 計上黒字のうち、モノ+サービスの黒字は7.7兆円に過ぎない。これに対し、
 海外向け投資から上がる配当金や利息などが11.4兆円に達する。2001年には
 モノ+サービスの黒字は3.2兆円まで落ち込んでいた。


○弟の藤巻幸夫語録
・久しぶりに再会した人の名前を忘れている時の必殺技。「こいつ新しい部下です」
 と一緒にいる人間に名刺交換をさせて、こっそり覗いて思い出す。
・社長に必要なのは「ロマン、ソロバン、ガマン」。
・禅語に「知足」と言う言葉がある。足るを知る人こそ、最も幸福に近い人だと。
・高い志を維持することこそ、リーダーの最大の使命だと思う。
・部下にいつも言っているのは、「視野は広く」「アンテナは高く」「腰は低く」
 という3カ条。
・類は友を呼ぶ。一芸に秀でる者は、別の一芸に秀でた者を呼ぶもの。
・経営において「サムライ・チェーン・マネジメント」(SCM)が重要。SCMのSは
 5つのSから成る。シンプル、スピード、センス、スマイル、しつこさ。
・リーダーになる不安を突破するには、「自分の思いを何としてでも周りに
 届けようとすること」「メンバー1人ひとりをよく理解しようとすること」、
 つまり本気でコミュニケーションをとること。
 志と人間力、システムとルール、この4つがチームをまとめていく要件。
 人間力を高めるには努力が要るが、志は今、この瞬間からでも変えられる。