副題に「失業保険1兆円はどこに消えたか」とあるように、90年代前半には4兆7500億円の積立金を持ち「保険の優等生」と呼ばれた雇用保険が、その積立金を大幅に減らし失業手当を減額している現状に、疑問を抱いたジャーナリストが厚生労働省の内部資料を基に、「雇用保険」を舞台とした役人の錬金術と天下り利権システムを明らかにした本である。年金も相当ヒドイが、雇用保険は更にヒドイことが分かった。

この4月から雇用保険に加入しなくて良くなったが、サラリーマンを辞め本当に良かったと感じた。(嬉)
著者の1人の大川興業大川豊氏のプロフィールに、就職試験153社に落ち自ら会社を設立し154社目に自分に内定を出したという話は笑える。


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雇用保険の現状
・1991年には年間9千億円の黒字で、1996年までは4知妖艶の積立残高があった。
・ところが、2002年には積立金が4千億円と1/10にまで減り、現在は毎年税金を
 4千億円投入している。
・2005年の保険料収入2兆3千億円に大志、失業者への給付は1兆6千億円に過ぎない。
 毎年1兆円が何処かに消えていることになる。
・2000年から2004年まで、雇用保険労災保険の保険料から使われた事務費は
 1兆5715億円。1975年の雇用保険法成立以来、事務費として「保険料の流用」が
 常習化。
→「労働保険特別会計」という国会で審議されない役人のフリーハンドとなって
 いるカラクリがムダ使いの温床。
 現在31の特別会計があり、一般会計とのダブリを除いて200兆円と、一般会計の
 3倍の厚労管理用の第二の財布となっている。


雇用保険のムダ使い

<金バッチ事件>
・2005年5月、雇用促進事業団が雇用能力・開発機構へ移行する記念に「金バッチ」を
 7100個作成し、全職員4500名とOBに支給していた事が報道された。
 10金製で1グラムの金が含まれていた。
・1999年に1390万円(1個当り単価1950円)をかけて、雇用保険から制作費を捻出。
 機構への移行は、職員削減、財政立て直しが理由であるにもかかわらず。
・2004年に金バッチは廃止され、4815個を回収して延べ板10本5キロ弱の金を抽出し、
 2005年3月に726万円で民間に売却。錬金術にかかった費用は40万円。


<勤労者保健施設のたたき売り>
・スパウザ小田原:1988年4月、総工事費455億円で建設。→小田原市に8億円で譲渡。
・1961年、雇用促進事業団によって整備されて以来、総額約4500億円の整備費を
 投入したきた施設2070ヵ所の中には、1050円で自治体に譲渡されたテニスコートもある。
 2005年1月末までに売却された施設の総収入は、僅か122億円で建設費の3%。
→年金施設が問題になり閉鎖されたが、雇用保険の方は問題にされる前にサット
 たたき売りされた。


雇用促進住宅
・1961年から1999年にかけて、雇用福祉事業の一環として全国に建設され賃貸住宅。
 当初は炭鉱離職者の天職に際して使用実住宅確保の問題解消の目的で始まった
 制度だが、現在は一般労働者も入居可能。
・2005年3月末で全国に1535ヵ所、3857棟、14万2444戸あるが、地方では空き率が高い。
・機構の職員や雇用保険を払っていない公務員が入居している不祥事が多発。


アビリティガーデン
・全国唯一のホワイトカラー向け公共職業能力開発施設
・施設内のスタジオから衛星通信を介して全国125ヵ所の会場でセミナーを開催。
 2004年には述べ7万4626人が受講したが、全国125ヵ所で56回の講座で割ると
 1会場平均10.6人しか受講していないことになる。
・衛星中継システムの設置に31億5千万円を投入し、2000年から5年間で運営費
 17億2280万円をかけてきた。1講座当り501万円のコスト。
 全投資コスト48億7280万円に対して受講収入は4億2032万円。41億9832万円の
 雇用保険料が消えた事になる。


<私の仕事館(京都・関西文化学術研究都市)>
・総費用581億円。8万3千平方メートル。
・年間収入1億円に対し、維持費は年間21億円。
雇用・能力開発機構から職員が27人、職員給与が総額2億4700万円。
 民間職員含め人件費6億円。システム管理費3億8千万円。
・設計はNHKの子会社が受注し、随意契約で入っている。
 展示設計について基本設計と実施設計で計10億円がNHKが関わった共同企業体
 (NHKエンタープライズ丹青社)に支払われている。
・館内に流れているビデオは全部で45億円かけて産業雇用安定センターに発注
 され、そこからNHKやTBSの子会社に丸投げされた。


<職員宿舎>
・2005年までの6年間で全国に作られた職員宿舎は13棟。雇用保険料から事務費と
 して捻億6900万円が、捻出された。


<労働政策件杞憂・研修機構>
厚労省関係者の中では保養所と呼ばれており、男女別の風呂、大広間、和室が
 たくさんある。
・職員は150人。うち30人は常時厚生労働省よりの出向。
・勤務時間は午前9時からとなっているが、「9時半まで出勤を猶予」という事に
 なっている為、9時に来る人は誰もいない。


○1998年以降に雇用対策に投入された予算

1998年 1兆495億円
1999年 1兆3299億円
2001年 8771億円
2002年 5130億円

 


雇用保険三事業
・70年代の高度経済成長期に失業率が下がり、失業保険料収入のストックが
 厚くなって来た時、失業保険を雇用保険という呼び名に買え、失業者だけ
 ではなく、雇用されている人達の為に保険料を使えるように官がビジネス
 モデルを変更した。
雇用保険三事業の財源は事業主負担分で、売却前の施設の運営の為に
 雇用。能力開発機構は年間修繕費65億円、年間借地料17億円、運営費9億円、
 と年間91億円もの支出をしていた。