刺激的なタイトルの本を見つけた。元国税調査官の著書だった。税務当局では既知となっている様々な100近くの税務署への対抗策としての脱税の手口が書かれていたが、「あくまでも税金の知識を深めるためのテキストとして活用してほしい」と巻頭に書かれていた。(笑)


脱税のススメ―バレると後ろに手が回る

脱税のススメ―バレると後ろに手が回る


<読書メモ>


○税金はなるべく払わない方が善
 ・税金は必ず無駄遣いされるものだから、払わないほうがいい。
 ・税金を使う側にとっては、「他人の金」。
 ・税金を払う為に働く人と、税金で仕事を作ってもらっている人の2つに日本の
  勤労者は二極化している。
 ・税金で仕事を作ってもらわないと生きていけない人達が、あまりにも増えすぎた。


○脱税の定義
 ・法律的には「検察から告発され裁判で有罪になったもの」という狭い範囲の犯罪。
 ・告発の基準は1億円以上の脱税額があり、なおかつ悪質な場合。
 ・いかなるやり方で課税を逃れていても、「隠したり」「でっちあげたり」して
  いなければ、脱税とはならずに、単なる「課税漏れ」となる。


○脱税が成功する3つの要素
 1.不特定多数の客を空いてにしていること
 2.領収書がいらないこと
 3.現金収入であること(現金商売での脱税は、どんな手の込んだものより見つかり
  にくい)


○脱税者の多くは慌て者
 ・悪質な課税逃れの大半のケースは、「期末になって、慌ててごまかした事が
  バレた」ものであり、手口は単純。
 ・本当に税金を少なくしようと努力している人は、税法をよく勉強して、税法に
  のっとった節税方法をあらかじめ講じている。


○脱税が発覚する3つのルート
 1.税務調査:税務署が、直接出向いた際に脱税の痕跡を見つける。
  →ある程度の事業規模があり、毎年黒字をだしている事業者や法人を対象に
   3〜5年毎に調査が行われる。
 2.預貯金、証券、土地、高級車などの資産関係から発覚。
  →納税額が少ないにもかかわらず多額の預貯金や証券、不相応な土地建物を
   所有している人はチェックされ調査される。
 3.風評、密告。
  →国税は密告があれば、必ず対応し、そのまま放置はしない。
   「長者番付」発表も、市民から長者番付に載っていない裕福な生活を
    している人の密告を促す為に始められた。


○追徴課税
 ・「過少申告加算税」:課税漏れしていた金額に10%をかけるもの。
   →悪質でない課税漏れに対してかけられる。最高5年間遡って追徴。
 ・「重加算税」:課税漏れしていた金額に35%をかけるもの。
   →この重加算税がかけられるものが「脱税」。最高7年間遡って追徴。


○税務調査での指摘事項に対する処分
 ・「更正」:税務署が税金を追徴すると強制的に処分する厳しいやり方。
  →税務署の言い分に納得がいかない時は「不服申し立て」ができる。
 ・「修正申告」:税務調査の指摘を受け、納税者が自発的に修正して申告を
   やり直すもの。
  →税務調査の殆どは、修正申告で処理される。


○税務調査
 ・税務調査の建前は「納税指導の一環」だが、納税者に黙秘権はない。
 ・調査官には「質問検査権」があり、税金に関する事を全て答えねばならない。
 ・日本は自分の税金は自分で申告して納めるという「申告納税制度」をとっている。
  →納税者は税金の申告を怪しまれても、自らその潔白を証明する必要はない。
   税務署が、不正の証拠をだして初めて有罪になる。


○税制の欠陥(開き直った白色申告者は強い)
 ・白色申告者は証拠書類が残っていないので、適当に税金を決めて納めている。
 ・追徴課税は交渉で決めることとなり、本来かけられるべき税金よりも
  かなり安くならざるをえない。


○個人事業者にとっての究極の課税逃れ商品「小規模企業共済」
 ・中小企業経営者のための公的な積立制度で、退職金や年金の代わりになる。
 ・掛け金の全額が所得控除できる。最高月額7万円で年間84万円。
 ・1年分の前払いもできる為、年末に思った以上に所得が出ていることが
  分かった時に加入できる。
 ・会社の経費にはできず、あくまでも事業者個人の所得税対策用。


○社員の税金を少なくする方法
 ・社員の住居を借り上げにして、社員から家賃の半分程度を支払わせるだけで、
  社員の源泉徴収税は安くなる。月8万円を肩代わりするだけで、年間20万円の
  所得税と住民税分の利益を社員にもたらせれる。
 ・社員の利益になることで、非課税のもの
  →昼食、夜食の補助、自由拓ローンの利子補助、日直の手当


○脱税の手口
 ・「収入除外」税務署用語で「売除(うりじょ)と言われ、調査官が発見すれば
  最も手柄の高いもの。
 ・「経費の仮装」代表的なものは、水増し人件費、架空外注費。
  「在庫の除外」実際よりも在庫を減らせば利益は、その分少なくなる。


○医師の税制上の特権
 ・必要経費として認められる範囲が広く、税金の面で優遇されている。
 ・医療法人化すれば、医療に関する財産の殆どを無税で相続できる。
 ・一昔前まで、医師や病院は脱税常習者の中に入っていた。
 ・業者からの多額の「受取リベート」を申告している医師はいない。


○学校や教育現場ほど脱税くさい場所はない
 ・学校法人は、「営利事業をやっていない」ので、金の流れが非常に不透明。
 ・営利事業をしないということは、金儲けをしていないという事ではなく、
  「金儲けを目的とし、設けた金を一定の手続きに従い、出資者に分配する」
  方法をもっていないというだけ。
 ・授業料、入学金、補助金などの学校収入は、営業利益とはみなされず、
  学校法人には「法人税」がかからず、税務署に決算申告する必要もなく、
  税務調査の対象に殆どならない。
 ・学校法人の経理チェックは、文科省地方公共団体でが、調査専門の機能を
  もっておらず、学外からチェックされることは無い。
 ・小中学生1人に100万円使われている教育費が何処に行っているのか疑問。
 →教育、福祉、医療など、高尚な理念を掲げている業界ほど金に汚い。


○宗教法人は恵まれた税制を持つ業界
 ・事業部門と、宗教部門に分け、事業部門の収入の多くを宗教関連へ寄付する
  ことで、税金のかかる収入を低く抑えることができる。
 ・寺の住職は宗教法人の職員扱いで、給与所得者。
 ・200軒の檀家があれば、余裕で暮らしていけると言われる。


○政治家の税制上の恩恵
 ・誠治単体は税務署の管轄外。
 ・政治家本人の必要経費として認められる範囲が異常に広い。(無制限的)


○農家の既得権
 ・農家の所得を決める方法である「検見」は、太閤見検地の頃からの方法で、
  地域で持つとも収穫が少ないと思われる農地の収穫を基準にして、その地域
  全部の農家の所得を算出する方法。農家の既得権。
 ・農地の相続には、相続税は殆どかからないので、共同住宅を作るために
  特定の業者に農地を売って転用しても相続税がかかってこない。