本書は翔泳社の「大人の社会科シリーズ」として、社会の仕組みと大原則を、社会人・ビジネスマン向けに分かりやすく「為替」ついて解説されている。著者の岩本沙弓さん(青山大MBA)は、1998年から2005年にかけて外国為替を中心にトレーディンク業務に従事されている。米国のドルにとってメリットのある非常に偏ったシステムが世界市場で、どうやって形成されてきたか、オープンデータで分かりやすく検証されている。


円高円安でわかる世界のお金の大原則 (大人の社会科)

円高円安でわかる世界のお金の大原則 (大人の社会科)


<読書メモ>


○為替市場の習慣
基軸通貨を先に、非基軸通貨はあとに表記。(USD/JPY、基軸通貨1ドルが非基軸通貨円でいくらになるか)
・英ポンド、ユーロ、豪ドル、ニュージーランドドルなどの基軸通貨に対して、米ドルは非基軸通貨になる。1900年初頭以前の大英帝国の時代の名残り。


○日本の「外貨預金」の大半は米国債
・外貨準備高の97.2%のうち、殆どが米国財務省証券(88.6%)。
・日本は世界の外貨準備高ランキングの上位にいて、他の先進国のランキングは低く、さらに日本の増加額が多いので、先進国の外貨準備の増加率き、日本の外貨準備額次第になっている。


○バブル生成から崩壊まで
・「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸運の中で消えていく」(米投資家、ジョン・テンプルトン)


○近代3大バブル

1.チューリップ・バブル
・1602年、オランダ東インド会社設立。アムステルダムの人口は1570年3万人、1600年6万人、1622年に10万人。
・チューリップの価格は1934年から1637年にかけて上昇。1636年後半から急騰し、1637年2月にピークを迎えた。
・2年でパブルが生成され、幸福の時間ぱ6か月で崩壊。


2.南海バブル
・1711年、英国・南海会社設立。南アメリカ貿易で儲けられるはずという思惑で、株が急騰。
1920年1月の100ポンドから6月24日には1050ポンドの高値をつけ、政府の規制により、バブル崩壊


3.ミシシッピ会社
・フランス資本の開始やで、欧州の投資家を巻き込んでミシシッピー川流域の開発を名目とした投資ブーム。
・1719年5月の500ルーブルから1720年2月に1万ルーブルへ高騰。
・上昇わ初めてから下落が始まるまで、ほぼ1年。


○近代バブルの共通点
・パブル発生には、資金が必要。
・人が集まっている。
・バブル末期には全員参加型の相場になっている。
・バブルの期間は約1年。


○バブル生成のチャートの特徴
・ピークを迎える最後の15か月に急騰し、高値の2か月はか確定が浮いているようにみえる。
・その後、急激な急落が始まりね下落最初の3か月で15か月かけて上昇した価格を消化してしまう。
・1929年世界恐慌、1989年日本のバブル崩壊、2000年ITバブル崩壊時のダウのピークを100とした上昇率に直すと、いずれも下記の奇跡となる。

第1段階 バブル生成のスタート時点の価格は20の水準 20→40を目指す
第2段階 第1から2段階まで約7年間 40→60まで上昇

{第3段階|1年半で第2段階の価格水準かける1.3〜2倍まで高騰|60→ピークの100へ|


○米国流ファイナンス
・米国の財政赤字が拡大するとドル安懸念を伝えるニュースが流れるが、実際は、米国が財政赤字を増やしている途中ではドルだかに推移し、ピークになった数年後にドルバブルをはじめさせ、借金を一気に目減りさせることを繰り返している。


○年間の傾向

1月 変動大。ボーナス資金が市場に入るため、米国は株高傾向となり、つられてドル高
2月 アジア旧正月で停滞
3月 海外はイースターで閑散。日本の会計年度終了。日本の投資家の外貨資産の処分で円高に振れる場合が多い。3/31と4/1で急転することがある。
4月 日本の会計年度スタートで海外投資活発化。GWの海外旅行需要でドル高傾向
5〜7月 特になし。ややドル高
8月 米国は例年ハリケーン被害。欧米は夏季休暇だが秋口にかけてドル売りにつながる材料が出始める
9月 ドル安傾向
10月 ドル安傾向。来年のキーワード探し
11月 欧米機関投資家ヘッジファンド手じまい。感謝祭以降、取引閑散。ドル安傾向
12月 クリスマスまで取引閑散。ドル安傾向。年末年始は大きく動く


○相場格言
・Buy the rumour Sell the fact 「噂で買って、事実で売る」
→みんなの思惑が市場に出始めたら買うようにして、経済指標でも要人の必言でも噂になっていた事が実際に起こるだんかいでは売り逃げろ


○為替を動かす指標
金利差:お金は金利の低い国から高い国へ動く
・経済指標:GDP、雇用統計、CIP(インフレ率)

景気判断 良い 悪い
通貨 買い 売り
GDP 上昇 下降
雇用統計 下降 上昇
CIP 上昇 下降

美人投票的な動き


購買力平価
ビックマック指数(英国雑誌「エコノミスト」が毎年発表、有料)


○実質実行為替レート
・実行為替レートに各国の物価上昇率を加味したもの
・2008年にドル円は13年ぶりに100円割れしたが、前回の1995年の100円割れの水準と比較すると、実質実効為替レートでは円安水準。
・2004年以降、円高が進んでも日銀による介入が行われないのは、実質実効為替レートをで理解できる。


○データ入手先
(日本語のサイト)
日本銀行 「政策・業種別に探す」の欄に日本経済のデータが満載
財務省 「外国為替・国差通貨制等」の欄に為替関連データが豊富
総務省統計局 日本の消費物価指数などは、この統計データから検索すると探しやすい
Yahoo!ファイナンス 株式、為替、答申などの基本データ。時系列データも抽出できる
ドリームバイザー・ドット・コム(日本証券新聞社) 原油価格、為替、株式などを重ねてみれる。データ量も豊富で、過去20年までさかのぼれる
ロイター 世界の金融情報を提供している代表的な会社で、多様な金融情報を入手可能

(海外のサイト)
FRB・米国中央銀行
米国財務省
米国労働省 雇用統計のデータ
欧州中央銀行 
ブンデス・バンク(ドイツ) 中央銀行の機能は欧州中央銀行が継承しているが、ドイツマルク時代のデータが残っている
カナダ中央銀行 
中国人民銀行
ブリティッシュ・コロンビア大学 世界中のほぼ全ての通貨のデータが最も古いもので1971年からそろっている。データ抽出はExcelでのアウトプットも簡単にできる
The Economist 「ビックマツク指数」など独自の情報が入手できる