この本は、副島隆彦氏が税務署の強引な税務調査でひどい目にあった経緯を詳細に記録されており、「国家と福祉のために税金をたくさん取り立てて集めるのは当然のことだ」と頭から信じて疑わない税金官僚たちに、反省を促すために書かれている。

税務調査がどういうものか、理解するのには最適の本であった。まさしく「税務署と本気で闘う本」である。


私は税務署と闘う 恐ろしい日本の未来

私は税務署と闘う 恐ろしい日本の未来


○税務調査
・「課税処分のための調査」「滞納処分のための調査」「犯罪事件のための調査」の3つに分けられる。前の2つは任意調査で、最後の1つが礼状を伴う強制調査であるが、前2つも正当な理由なく拒むことはできないので、事実上間接強制。


○税務官僚の構造
・税務署長以下であっても税務職員の大半は、今でも殆どが高卒。
・公務員である税務職員、国税庁職員の8割が高卒であるため、「高卒官庁」と呼ばれる。
・大卒の税務職員は「国税専門官」となり、高卒は「国税調査官」。
・明治初期の太政官政府(律令体制の復活)以来、連綿と続く、公然の秘密で、誰からも嫌われる税金の徴収というイヤなキツイ仕事を国家制度として行わせる為に、東大卒の高級官僚が、自分たちに反抗できないノンキャリを差別選別して採用して家来にしている構造。
・高卒の国税職員OB税理士と、大卒国税OB税理士との顧問先・関与先の奪い合いの構図がある。


○税務行政・組織図
財務省財務省主税局→国税庁国税局(11局+沖縄事務所:職員5万6千人)→税務署(全国524署)
国税庁には、「国税不服審判所(本部・全国12支部)」と「税務大学校(本校・全国12地方研修所)」を所管
財務省の職員は、東京税関などの税関職員を入れると8万人。うち国税庁・税務署は約5万6千人。
国税局は全国で12しかなく、うち1つ北海道国税局か沖縄事務所が高卒職員のたたき上げ組に与えられる。
・一般大卒の「準キャリ」である「国税庁キャリア」には、金沢、高松。熊本などの国税局長のポストが与えられ、財務省キャリアの高級官僚には40歳前後で、東京、大阪、名古屋などの国税局長となる。
・高卒国税OB税理士と大卒国税OB税理士との激しい「収入保障」となる顧問先企業の縄張り争いがすさまじい。


○税務署との対決の始まり
・「副島隆彦の学問登場」のサークル活動をめぐり、個人の収益事業として、2004年10月18日に管轄の税務署員が訪問。
・調査は、過去3年分(2001年〜2003年)にさかのぼり、4か月間におよんだ。
・運営団体の言論活動のための会費を、個人の収入と判断された。
・学問道場は、対象の3年間で、会派、公園利用、書籍・ビデオの販売の合計で、5700万円の収入があった。
・3年間の税務署からの修正申告の「おすすめ額」は1322万円で、これに加算税15%が190万円、延滞税52万円、住民税が過去3年に遡って12%で約900万円と、合計2500万円となった。



○税理士は税務署と闘えない
・平成14年では、税理士登録者は全国で約6万6674人のうち、税理士試験組は2万8955人と前提の43%のみで、残りは国税職員OB組。
・税務署を23年務めたものには、ご褒美として簡単な内部試験だけで税理士になれる仕組みになっている。
・試験組の税理士の優良顧問先に、頻繁に税務調査が入り、嫌々でもOB税理士を顧問に迎える例もある。
・是コンク各地の税理士会の役職は、国税OBたちが殆ど占めている。
・税務署には、「質問検査権」(所得税法234条)という権限がある。
・税理士を監理する仕事は国税庁の主要な仕事となっており、争うと資格剥奪される規定がある。
国税庁に「税理士監理部」、国税局に「税理士管理室」があり、下部組織の各税務署には「税理士管理官」が存在する。
税理士会の決議を国税庁長官が「拒否」して向こうにする権限まで、税理士法に定められている。
・毎年春に、管轄の国税局に対して、税理士は自分が営む会計事務所の「従業員リストと関与先リスト」を提出させられる。





民主商工会
・発足50年の共産党系の中小企業団体。
・機関紙「商工新聞」には税務署との戦いの記録が掲載されることもある。


○税務署が「経費を認める、認めない」の法的根拠はない
・税務署員は「修正申告をおすすめするだけ。正しい深刻のお手伝いをやつている」というだけ。
・最終的には「(経費として認めるか認めないかの根拠は)社会常識」という。


○納税者は絶対に勝てない
「直接国税犯則事件(査察事件)」(出典『国税庁とウロイ年報書』財団法人大蔵財務協会)
・平成14年度における直接国税犯則事件の一審判決は169件で、うち有罪判決は169件。つまり、国が直接介入した脱税事件の裁判では仁川が100%勝訴している。
・平成9年から、少なくとも6年間、判決件数と有罪件数は同数となっている。

「不服審査・訴訟事件」(同じ出典)
・平成14年度に不服申し立てがあった5119件のうち、異議申立人の請求が一部または全部求められたケースは774件と16.1%のみ。


○「概算経費率の表」の存在
・この表の存在自体が国税庁のスキャンダルとなっている。現在は公式には廃止されている計算方法。
・自営業者1500万人は、この経費率表で課税され来たし、今でもこの表を基準にして課税されている。
・税務署では「概算経費率」のことを「標準」と呼ぶ。
・生保外交員の経費率は44%、バーのホステスは35%、ファッションモデルは40%。
・税理士、会計士、弁護士、医師の経費率は80%〜90%となっている。
・現在は、「経費の実額主義」として、「実際にかかった出費しか経費として認めない」と領収書が重要と表面的にはいっているが、今もなお、この表は使われ続けている。




○書籍の印税
・本の印税(著者の取り分)は、低下の1割と決まっている。
・『預金封鎖』と続編で合計20万部売れ、印税収入は3千万円だった。


アメリカへの貢ぎモノ
・日本は、「円高防止のためのドル買い介入」として、毎年約30兆円もの米国債を買わされている。
・すでに米国債を400兆円(4兆ドル)も日本の国全体で買っており、政府部門を全部合わせても600兆円しか国内資金(円建て)は残っていない。
・「1四百兆円の個人資産」はウソであり、本当は半分以下になっている。
総務省の発表では、郵便貯金が235兆円、簡易保険が120兆円、年金が200兆円(共済年金の国家公務員10兆円、地方公務員36兆円、民間企業の厚生年金が156兆円)で、合計555兆円。
・民間銀行を全部合わせて、2500兆円の預金量が帳簿上はあるが、2450兆円は運用されて貸付されているので、正味は50兆円しかない。
・外貨準備高だけで86兆円もあるが、平均1ドル130円前後で買わされた米国債は、為替差損で100兆円は出ているので、400兆円分の米国債は実質300兆円となっている。


○国家とは税金
・税金だけが実態のあるものであり、税金こそが国家や政治なるものの本体・本性・正体である。
・税金、税制こそが、国家という仕組みそのものであり、税金だけが政治と経済の中間にあって、両者をつないでいる唯一の実質のあるもの。
原泉徴収制度(withholding tax system)は、シカゴ大学ミルトン・フリードマン教授が考案して、1940年代にアメリカで初めて導入された制度。<参考図書>

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税務職員の内部の日々の業務や生態を、自分の経験から暴いている。
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