昨日5/30、「IBM中小企業イノベーション・フォーラム2006」が新高輪プリンスホテルで開催され、ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー日本支社長の高野登氏の講演を聞けた。

講演テーマが「レジェンダリーサービス〜伝説と感動を生み出すサービスの仕組みづくり〜」というだけあり、最高のホスピタリティ・サービスを提供する為に、会社としてどの様な仕組みづくりをしているのか、具体例が聴け、大変参考になった。


<講演メモ>


リッツ・カールトンの歴史(DNAの源泉)
1800年代半ばのフランスで、セザール・リッツ氏が「ホテル・リッツ」を開業。
 現在も存在し、シャネル創業家やダイアナ妃(故人)が利用。
 当時のホテル業界では非常識なサービスを提供した。
 (ロビーに花を飾る、顧客の好みをリストアップ、レストランにメニューを取り入れ顧客が選べる)
・1900年初頭、ロンドンのカールトン・ホテルと提携し、米ボストンに進出し成功する
・1983年に、アトランタでホテル経営(モナーコホテル)を始めたW.B.ジョンソン氏に、営業権とブランドを売却。新生リッツ・カールトン・ホテルが誕生。


○新しいDNA
・有名ホテルの副社長クラス5名で、新生リッツ・カールトンをスタートした時、喧々諤々議論の末、「新しいホテル・カンパニーを立ち上げる意味はない」という結論となり、「世の中に価値を生み出せる存在になる」という理念を掲げ、社内的にこの理念を守れる仕組みを持つことにした。


リッツ・カールトンの社風作り
・どうやって価値を高めるかを社員が考え、自分の給料を上げる為に起業家地を上げる努力をする。
・ゴールド・スタンダード(不文律)を明文化し、企業の価値を共有しできるよう、毎日の仕事の中で社員に植え込む。
・全社員の入社日、誕生日にお祝いをし、感動を体験させる。
 →世の中のサービスの8割は、人が介さない非接触サービスである現代に、社員自身が喜びや感動を意識するしくみ・環境をつくる必要がある。
・毎週木曜には、本社からの翌週のコミツトメントがEメールで届き、世界の全従業員35千人が共有する。
・毎週月・金曜日には、従業員のサクセスストーリーが配信され、そのメールを見た全世界の仲間から本人に、「Congratturation!!」のメッセージが届き、本人のモチベーションが益々上がり、自分の仕事に誇りを持てる仕組みを作っている。
・毎日「Credo Card」(信条カード)を全従業員が読み、自分の使命を振り返るようにする。
・あらゆる機会に顧客と情緒的絆(エモーショナル・アタッチメント)を作るようにする。
リッツ・カールトンマンの試験に合格すると1日2千ドルの決裁権をもつ事が許可される。
 →企業と社員との信頼関係を築き、仕事に誇りを持てるようになる。


○感動の事例
・ベットメイキングの担当者が、宿泊客の過去のデータベースを確認したところ、前回、「部屋で仕事をしたいので、電球を100ワットの明るい電球に代えてほしい」という要望があった事を知り、「仕事ができるように100ワットに代えておきました。いつものように22時くらいに、ブランディをお持ち致しましょうか?」とメモを残しておいた。
・フロリダのホテルで、夕方、ビーチの椅子を片付けていると、若い男性客から「今晩、彼女にここでプロポーズしたいから1セット残しておいてほしい」と頼まれた従業員が、宴会担当にあまった花束、レストランに試供品のシャンパン、クリーニング室にタキシードを手配してもらい、お金を掛けずに、タキシードを着てカップルが来るのを待って二人を感動させた。

すべてのエピソードが、顧客により口コミで伝わることとなる。
リッツ・カールトン大阪の初回顧客の6割は口コミ客。


○日本での展開
1997年に「ザ・リツツ・カールトン大阪」をオープン
2007年3月28日、六本木の東京ミッドタウン(旧防衛庁跡地)にザ・リッツ・カールトン東京をオープン予定