丸善丸の内本店で、奥村宏氏と佐高信氏の共著出版記念トークショー&サイン会があり、行ってきた。

大学2年に、佐高氏の著書に出会って以来、多分著書の半分くらいの50冊程度は蔵書として本棚を飾っているが、ナマで本人にお会いするのは、今回が初めてで感激した。
著書に、私の名前も書いてもらって、奥村氏、佐高氏、お二人のサインを頂けた。ブック・オフに売れなくなってしまった。(笑)
サインを貰う為に、私の前に並んでいた女性は、わざわざ静岡からいらっしゃったそうだ。


会社事件史

会社事件史


<対談のメモ>


コムスン事件
 ・介護事業は、広い意味での医療事業であり、株式会社が本来やるべきでは無い
  事業である。
 ・株式会社が、聖域まで入り込まないといけなくなっている。
 ・グッドウィルとは「善意」という意味だが、本人にモラルが無い事が問題ではなく、
  モラルが無い人が入ってきても問題ないように、しっかりとしたルールを作る
  事が必要。


○会社・法人の本質
 ・「個人」には肉体があり自然人だが、「法人」は取引の当事者とする為に、国家が
  法人に、あたかも人格があるようにされた存在であり、その存在に矛盾がある。
 ・法人その物には、意志もモラル無く、刑事責任を問われない。
 ・日本の刑法では、会社は罰せられない。(民事、行政法では追求できる)
 ・JR西日本は刑事責任を問われず、「悪いのは死亡した運転手」となっているが、
  そもそも会社の命令で、業務をしただけである。
 ・水俣病チッソも、会社は罰せられていない。
 ・カネミ油症の事件も、工場長は罰せられたが、社長は「知らなかった」として、
  罰せられなかった。


○「民営化」は言葉のゴマカシ
 ・政府は、民営化という名の会社化が良いと言っているが、そもそも英国のサッチャー
  が実施した事は、英語では「Privatization」と言い「私有化」と訳すべきであった。
 ・株式会社の存在が問題であり、民営化が良い事とは思えない。
 ・ある北海道の自治体首長が、「赤字だから悪いといわれるが、警察や消防は赤字が
  悪いと言うのか?」と確信を言っていた。
 ・ヒューザーの小嶋氏は、「自分は審査を通過した物を売った」と主張しており、
  審査機関を民営化して、信号機を壊してしまった。


○経済学の行き詰まり
 ・日本の経済学は米国の経済学をつまみ食いして、焼き直しているだけ。
 ・株主総会も米国では、「客のいないショー」と言われ、本当は最高意思決定機関で
  あるというフィクションとなっている。
 ・経済学者は現実の会社を知らず、その1割は「御用学者」で、残り9割は「無用学者」。
 ・株主総会が、実際にはどういう役割をしているかを解明した学者はいない。


○総会屋はお家騒動が生んだ
 ・カネボウ武藤山治(むとう さんじ)が、三井銀行から派遣されて、創業家を追い出し
  お家騒動となった時、児玉誉士夫を利用した。その後、児玉に弱みを握られ、
  付きまとわれることになる。
 ・その後、山治の息子の武藤絲治(いとじ)に対し、労働組合の委員長であった45歳の
  伊藤淳二(後に日本航空の会長)がクーデターを起こし、絲治を解任。
 ・伊藤の事を山崎豊子は『沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)』で絶賛しており、人物を
  分かっていない。瀬島龍三も『不毛地帯〈1〉 (山崎豊子全集)』で絶賛している。


○会社本位主義の崩壊
 ・90年代のバブル崩壊後に、内部告発が表面化した。
 ・ミートホープ事件についても、以前から何度も内部告発があり、役所の対応が
  遅れただけ。
 ・1955年体制で出来上がった「政官財の支配構造」がバブル崩壊で、「政」が全ての
  責任を「官」に押し付けてしまい、官僚システムが崩れてしまった。
 ・方向性が全く分からなくなり、マスコミも混乱している。


○株式会社は過去の実験の中から生まれた
 ・人類にとって、事業をやる上では企業体が必要であるが、株式会社は企業の中の
  1つに過ぎない。株式会社に代わる企業体が必要である。
 ・60〜70年代に、消費者運動が盛んな時、反企業運動が激しくなり景気が後退した
  が、本来ならば、「株式会社批判」をすべきであった。
 ・コーポレートガバナンスの必要性が言われ、単なる会計手段にしている傾向が
  あるが、社内から内部告発が入ってくる仕組み作りが必要。


○日本のジャーナリズムは危機的状況
 ・マスコミの記者、特に経済記者の質が相当低くなっている。
 ・佐高氏は3年前から、奥村氏は昨年から、日経新聞を読んでいないが、全く
  生活に問題がない。
 ・売上のために、トヨタに迎合するのだけではダメ。『トヨタの正体―マスコミ最大のパトロン トヨタの前に赤信号はないのか』は名古屋地区を中心に7万部売れた。

トヨタの正体―マスコミ最大のパトロン トヨタの前に赤信号はないのか

トヨタの正体―マスコミ最大のパトロン トヨタの前に赤信号はないのか