情報通信研究機構(NICT)が企画している起業経営セミナーで、元ハイパーネット社長の板倉雄一郎氏が講演された。事前に著書の文庫本を読んで望んだが、実際に本人に会うと、やはり強烈なオーラーを感じた。風邪気味とのことであったが、与えられた3時間の講演時間の間、機関銃のように止まることなく話続けてくれた。
オンライン証券会社の収益モデルは、勉強になった。騙されないように気をつけたい。
日本の国債の金利が1.7%で、トヨタの銀行借入金利1.4%よりも高いという事を知った。国よりトヨタの方が信用力が高いということか?
講演後の質疑で、会場から「もう一度ベンチャーをやらないのか?」という質問に対し、「年を取るとゼロからはやれない。色んなことを知りすぎるとできなくなる。自分がCEOとして、ファンダーとして、社員を引っ張ることは無い」と答えられたことが大変印象に残った。
板倉氏が主催する「企業価値評価セミナー」(2日間で28万円)に関心を持った。
ちなみに、当該セミナーの授業料の振込先は、板倉氏の個人銀行口座。個人事業主として年商1億円を超えているそうだ。
<講演メモ>
テーマ:「ベンチャー経営の実際−失敗から学ぶ、社長失格から得た教訓−」
○近況
・10年前の12月に自己破産して、つい先日、東京三菱のICカード(クレジット機能付)で
やっとクレジットカードが作れた。教訓として、日本では失敗は結構、後を引く。
○ベンチャーとは何か?
・1つのビジネスモデルに経営資源を投入すること
・融資資金ではなく、3年で10倍のリターンを求めるような投資資金を使うべき
・目的を実現する為の手段としてベンチャーを使う
○『シリコンバレーの100年』(CS放送)
・新興企業の100社の内、3年後に生き残るのは3社のみ
・97社の失敗の経験を糧にして、残りの3社が成長する
・VCが投資するのは、失敗経験がある人
・失敗経験が無い人は、全力でやった事が無い人
○ベンチャーをする上で、注意すべき3つの大事なこと
1.自分が売っている価値は何か?何が価値の源泉か?
→ビジネスモデルを考え、バリュー・ドライバーを見つける
自分の立ち位置は何かを考える
・米自動車メーカーのタッカー社の例
「高くてよく故障する車」で有名だったが、二代目社長の号令で「安くて
壊れない車」に改善した所、全く売れなくなった。
顧客にとっての価値は、「どうしようもない車を所有できる程、自分は
金持ちである」というステータスであった。
・Amazon.comは、インターフェイスの部分にWebを使用しているだけで、
巨大な倉庫では、作業員が在庫を探して走り回っている。
・セブン・イレブンは、POSシステムで、売れ筋商品を管理し、利便性を
提供し、在庫リスクも減らしている。
セブン・イレブンは、ブランドとPOSシステムに投資し、その他はフランチャイズ
オーナーの力を借りている。
・ハイパーネットは、新しい仕組みを生み出す事に価値を持ち、新しい仕組みを
売ることに専念すべきだった。自分で大きなリスクを取って事業をしてしまった。
・殆どの事業は「垂直統合」か「水平統合」のどちらかに分かれる。
垂直統合:任天堂 時価総額はトヨタの次で2位となった
アップル
水平統合:ソニー、マイクロソフト
→垂直統合の方が、リスクが大きい
2.誰とやるか?
利害関係者(ステークホルダー)、経営パートナー選びが大事
経営者は、利害関係者のベクトルを合わすだけ、事業のリスクに応じた利害関係者を
選べていれば、経営が楽になる。
・リスクが大きい事業はエクイティで、リスクが小さい事業はデットで資金調達する。
・会社とは誰のものか?→の前に会社とは何かを咲きに考えるべき
会社とは、「利害関係者の集団」であり、物ではなくあくまでも「仕組み」
全ての利害関係者は、会社を介して互いに価値交換をしている
全ての利害関係者にとってフェアでないと、会社の継続性が保てない
3.お金(価値交換の媒介)に関する知識
→自社の企業家地を理解する知識を持つ
・経営者は企業価値の拡大が使命であるが、自社の企業価値を知らないと、VCや
証券会社に騙されて、企業価値を奪われてしまう。
・セスナ機は飛ばせてもジャンボジェット機は飛ばせないのと同じで、年商10〜20
億円まではセンスで経営できても、それ以上の規模になると経営指標の理解が
必要になる。
・オンライン証券会社の収益モデル2つ
(1)取引手数料→顧客に頻繁に売買取引をさせる仕組み
(2)信用取引の金利:顧客にレバレッジをかけさせて金利を稼ぐ
金利は売上計上できないので、松井証券は売上げより利益が大きい
・MSCBは、引き受け証券会社は絶対儲かり、既存株主が損をする仕組み
グッドウィルは、MSCB比率をコムスン事件前の17%→事件後34%に増やし、
自分が引き受けている形になっている。
・3千万円のキャピタルゲインを得たという人はスゴイか?
→元本の投資額がいくらかで、全く評価が変わってくる。
・元手1億円で3千万円のキャピタルゲインを得たという人はスゴイか?
→資本コストの情報が足りない。
トヨタは1.4%で銀行から借入している。
銀行は信用力が高いから、安い資本コストで預金者から調達できる。
・ポイントカードは、プリペイドカードを買っているのと同じで、金利もつかない。
・アイデアに価値があるから創業する。将来の事業価値が1億円と考えるなら
1億円を発行株式数で割り、1株いくらで何株分けてあげても良いと考える。
・日本の国債は、今後金利が上がれば暴落するが、日本が南米のようにデフォルト
することはない。国債の95%は日本国民が所有している。
・日本が今後、ハイパーインフレにならない理由を見つけることは難しい。