関東経済産業局主催で、「企業発起業家を志す集い」という企画が行われている。第2回目の今回は、富士通から社内ベンチャーとして起業されたアクセラテクノロジの進藤達也氏の講演を聞く機会を頂けた。
富士通の研究者から、アクセラテクノロジ(検索技術の特許を所有)を創業するまでの生々しい苦労話を、飄々とお話頂け、大変有意義な時間であった。
金儲けよりもものづくりに魅力を感じる根っからのエンジニアであり、僅か1時間の講演だけで、人間的な魅力が十分感じ取れた人物であった。
自分が10歳若かったら、社員に志願して、アクセラテクノロジのドアをノックしただろう。
講演の最後に進藤社長から、起業家を目指す参加者に向けたメッセージが印象に残った。
「なぜ、あなたは会社を起こそうとしているのか?目的は何でもいいので、シンプルであるべき」
<進藤達也・代表の講演メモ>
○アクセラテクノロジの技術
・国内ブログの4億以上の記事を3分で検索できる
→ブログは全世界で、1日60億記事増えている。
・社内の複数のサーバーを、横断的に、役職者別にレイヤーをつけ検索結果を
変えられる。経営幹部、マネージャー、一般社員で検索できる範囲を変えられる。
○起業までの経緯
・1983年、早大理工(電子通信学科)卒、富士通研究所でCAD用スーパー
コンピュータの開発を担当。
・1990年、スタンフォード大に留学し、博士課程の学生を教授が雇用し
役に立たないと首切りされるプロフェッショナルな学生達を見る。
・1997年にスーパーコンピュータ向け高性能検索システムを開発
・1999年、富士通がスパコンから撤退。
→スパコンは、F1と同じで、世界1位になるのが目的であり、それを
ビジネスにしてはいけない。
サンブリッジのアレン・マイナー氏と出会い、起業化を検討。
○優位性の変化
・大量生産の時代:社内通達の徹底、ワークフローの確立、マニュアル化
・ニーズの多様化の時代:ニーズのタイムリーな把握、現場の自立的問題解決、
ノウハウ・成功事例の活用
○アクセラテクノロジの顧客事例
・@cosme 会員数75万5千人、月/1億5500万PV、クチコミ数は約505万件
・東レ Dominoサーバーを33台使用
○富士通のベンチャー制度
・1994年に社内ベンチャー制度が創設され12社が創業。社長は株式の51%を所有。
・2000年にスピンアウト・プロムグラムとなり、社内のシーズを掘り起こしている。
・アクセラの場合、事業化の企画から起業まで1年かかった。
○アクセラテクノロジー起業までのスケジュール
・2000年4月 事業プラン作成、5月に友人を誘う
・2000年9月 1〜2週に1回、本社企画部門と面談(職場には極秘)
・2000年10月 企画部門の担当→課長→部長と稟議が進む
・2000年11月 企画部門長と面談し罵倒され、友人が去る
・2000年12月 スピンアウト・プログラム制度の発足
・2001年2月 サンプリッジの審査、アドバイスを受ける
・2001年5月 本社の企画・管理・経理部長クラスを総動員
・2001年6月 社長承認
・2001年7月 会社設立、社員5名、資本金1千万円
・2001年8月 増資により資本金1億円
・2001年9月 BizSearchを出荷
○企業内起業をしてみて気づいたこと
・時間が掛かる
本社企画部門の査定→ソフト事業部の査定→経営会議承認
しかし、起業後の方がもっと大変である。
・ビジネスプランが全てである
月単位の損益、キャッシュフロー、バランスシートをBest、Base、Worstの
3ケースで作成し、販売会社を積み上げて作成した。
・インキュベーターの力を借りるべき
客観的に厳しく見てくれるプロがいる
資本政策では、起業家が最大シェアを持てるように注意してれ、どの
ダイミングで1株いくらで貰うか約束をとる事が大事
・販売パートナー作りに苦労
実績をまず作り、パートナーが儲かる仕組みの明確化が必要
○起業後に経験したこと
・創業と同時にネットバブルが崩壊
2001年7月設立、12月末までにライセンス1本のみ。翌1月に富士通と販社契約。
キャッシュだけが出て行き、設立半年で存続の危機。
・2005年初の赤字。理由はブログ検索技術に1億円を投資。社員が居なくなった。
・取締役の人選ミス
顧問弁護士にメールで暴言を吐き、社外取締役が赤字を理由に社長批判をし、
自分が鯱用になろうと画策した。
・目先の売り上げ増を狙ってしまい、「即戦力営業」を採用し失敗
外資系出身の40代営業を4名雇用した所、マーケティング批判しかせず、
結局は去っていった。
・富士通向け売上シェアを段階的に下げれている
設立当初3年間は7割だったが、現在は45%程度
○アクセラテクノロジで働くと嬉しい10の理由
1.知的財産型のソフトウェア企業で将来性がある
→エンジニアがヒーローになれる
2.若くても責任ある仕事が任せられる
3.オフィスが恵比寿駅で、素敵なお店がある
4.実戦で技術を磨く舞台がある
5.一から会社を作り上げていく楽しみがある
6.ストックオプションで一攫千金があるかも?
7.ソフトウェアの製品開発が好きだ
8.たんくろ君が好きだ(たんくろTシャツもある)
→たんくろ君とは、会社のキャラクターで「単月黒字」から命名由来。
9.大企業並みの給与で安定している
10.誕生月は社長と美味しいレストランでランチパーティできる