元国税調査官の大村大次郎氏の著書を、片っ端から読んでいる。この本は副題に「領収書からみえてくる企業会計・税金のしくみ」とあるように、領収書の本である。そば屋は手打ちが多いので、玉の仕入れがなく、使ったそば粉で売上を推測するしかないので、脱税しやすいという事のようだ。
そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか?―領収書からみえてくる企業会計・税金のしくみ
- 作者: 大村大次郎
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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<読書メモ>
○領収書とは
・事業の経緯費を計上したとき、その経費を証明するもの。
・経費は領収書がなければ絶対認められないものではないが、あったほうが税務申告はすんなりいく。
○コクヨの領収書
・コクヨの領収書は偽造領収書に使われやすいので、税務調査では細かくチェックされる。
・コクヨの領収書は記号で製造時期が分かるようになっている。
○領収書を使った脱税
・脱税の方法には売上を隠すか、経費を水増しするか2種類しかない。
・脱税しやすいのは、あったものを無かったようにみせかけて、証拠を消してしまう売上を隠す方。
・経費を水増しする脱税は、無い物をあるように見せかけるので、多くの証拠を作らねばならなく、発覚する機会がとても多い脱税方法となる。
○領収書と経費
・領収書がなくても経費と認められることはある。
・税法では、決算にかかわる証票類を残しておかねばならない義務はあるが、「必ず領収書を取っておかなくてはならないむという意味ではない。
・「使った日時」「使った場所」「使った目的」「金額」が分かれば経費として認められる。
・金額も正確にわからなければ、少なめにしていればよい。
○経費の勘定科目
・税務署が勘定科目で、うるさく言うのは接待交際費や人件費税額に関係する時だけ。
○日本は申告納税制度の国
・税務申告でグレーのものがあった場合、納税者側にそれを白だと証明する義務はない。
・申告納税制度では、納税者が自分で出した申告書は、明確な誤りがない限り、税務当局はそれを認めなければならない事になっている。
・グレーのものを否認するには、税務署の方が明確にそれが黒だという証拠を突きつける必要がある。
○印紙のいらない領収書
・領収書に3万円以上の金額が記載されていれば、金額に応じて印紙税がかかる。
・支払いを銀行振り込みで済まし、振り込んだ時の明細書を領収書代わりにし、会社の経費の証拠書類とする。
・メールで金銭の受領確認を行う。つまりメールで領収書を発行する。印紙税は書類に対してかかる税金なのでメールに印紙は貼れない。
○領収書の宛名
・宛名が「上」になっている領収書は認められないという噂はデマ。
・会社の経費の領収書を社員が貰う時は、「会社名でないとダメ」という規定があるかもしれないが、税務申告上はそんな規定はない。
○領収書の歴史
・会計の世界で領収書が重要な意味を持つようになったのは、申告納税制度となった戦後から。
・戦前の日本は、賦課課税制度といい「お前はいくら税金払え」と税務署が税金を一方的に決めて、納税者はその額を払えば良かった。
・戦前は税務署が決めた税金額を払えば良かったので、脱税は殆どなかった。
・昭和20年代は、申告書が間違っているので税務署が新たに税金を決める「更正」が多発した。
・何とかして申告納税制度を根付かせようとして、青色申告制度を考え出した。
・青色申告制度は、帳簿をつけ証票類を保管するという納税者の義務を果すだけで特典がもらえるという、良く考えればおかしな制度。
○領収書がいらない職業
・開業医には、社会保険料収入の7割が自動的に経費になるという制度があった。
・サラリーマンの経費にあたる収入の3割程度の「給与所得控除」に対して、7割が自動的に経費になるという既得権。
○サラリーマンの特定支出控除制度
・特別な支出がある人の条件が厳しく、該当する人が殆どいない。年間10人程度。
・下記の5つの条件のうちどれかに宛てはならないとダメ。
1.通勤費が異常にかかる人
2.転勤に伴う費用が異常にかかった人
3.仕事に関係する技術や知識を得るための費用がかかった人
4.仕事に関係する資格を得るための費用がかかった人
5.単身赴任での自宅との旅費ににお金がかかった人
・給与所得控除の額を超えた額だけ、経費の計上が認められる。